コラム

新天皇・新皇后が「国際派」に慌ててイメチェンするのは危険だ

2019年05月09日(木)18時20分

だが令和を迎えた現在、ネットによるコミュニケーションが活発となるなかでの対立構図は異なる。一部の保守派は男系主義を重視するあまり旧宮家の皇族復帰まで唱えて「昭和天皇家」を軽視し始める一方で、元来は天皇制度に冷淡であったリベラル派が天皇への積極支持に変わっていたりする。こうした「ねじれ」は不安定なものを抱えており、天皇皇后として、バランスある立ち位置を定めるのは困難を極めそうだ。

そのように国内の支持層に動揺があるなかで、新天皇新皇后が「国際派」へ拙速なイメージチェンジを図るのは危険だ。その意味で、即位直後に予定されるトランプ米大統領の国賓待遇での来日は大きな試金石になるだろう。

天皇皇后像としての新鮮味をアピールするのは差し控え、とりあえず見事な英語で品格と教養を示しつつ、大統領の持つ庶民性も「立てる」ことで関係を円滑にする、そのような儀礼の実務に徹してはどうだろうか。それ自体が簡単ではないかもしれないが、周到な準備を行うことで、一歩一歩を踏み固めることが肝要であると考える。

<2019年5月14日号掲載>

※この記事は本誌「日本の皇室 世界の王室」特集より。詳しくは本誌をご覧ください。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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