コラム

テレビ報道の自由と中立性はどう確保したらいいのか?

2016年04月14日(木)15時30分

 もちろん、そうした作りが可能になるには、一定レベル以上の出演者の話芸が必要ですし、いい意味での大所高所からの演出も必要になります。ですが、成熟した社会ではこうした報道姿勢というのは必要だと思います。それこそ今のままでは、「山口氏」と「市民団体」が喧嘩すればするほど実際の番組は「面白くなく」なって、せいぜいタレントの若さを売り物にするしかなくなるからです。

 もう一つの問題は、選挙との関連です。

 山口氏は「補欠選挙の最中」だから駄目だということを言っています。確かに、日本の選挙制度では、選挙戦に関わる自由な言論というのは、特にテレビの場合は公示と共に事実上禁止されることになっています。つまり、投票日が近づいて有権者がより真剣に選択を行う時期になると、反対に意思決定に必要な価値判断のチョイスに関わる情報が遮断されてしまうのです。

 これは選挙に関して「公正」な報道を定めた公選法の報道規制条項がネックになっています。

 ですが、公示後の一番必要な時期に価値判断の材料となる言論が統制されるというシステムは、どう考えても破綻しているように思います。山口氏の勢いに任せた発言は、こうした問題も浮き彫りにしているのではないでしょうか。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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