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米共和党「シリア難民拒否」の根底にある孤立主義
3番目には、アメリカは自由と民主主義の理想郷だとして、混乱した「旧世界」からの脱出者を救済する存在だという理想主義があるわけですが、その伝統を受け継いでいるのは、どちらかと言えば民主党です。これに対して共和党は、開拓に苦労する中で過酷な自然や先住民との争いなどを通じて「自分たちのコミュニティの安全を守る」ためには自らが武装するなど「生き延びるためにはキレイ事を信じない」という現実主義を伝統として取り込んでいます。
そうした共和党の現実主義は、時に民主党の理想主義と厳しく対立します。今回の論争はその典型例だと言えます。民主党の側では、ヒラリー・クリントン氏に次ぐ「女性政治家の大物」とみなされているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)が、「共和党知事の難民受け入れ拒否」について上院の審議の中で激しい言葉で非難していましたが、どんなに批判しても哲学が違う以上は合意形成は難しいと思われます。
そして4番目には、何よりも現在の共和党は大統領選へ向けて「ポピュリズムが全開モード」になっているということがあります。「不法移民は全員国外退去」、「メキシコ国境には高い壁を建設」といった極論で人々の心理を煽る「トランプ旋風」が荒れ狂っているからです。共和党の知事たちは、その風に立ち向かうことはできないという判断から「類似のメッセージ発信」をしているのだと考えられます。
一部には、パリの事件を受けて「非常時だから保守の中ではジェブ・ブッシュへの待望論が拡大するだろう」という声もありましたが、現時点では「ジェブ復活の期待は空振り」で、むしろ「事件はトランプに追い風になっている」という兆候もあるぐらいです。
各州レベルに続いて、議会共和党も同様の動きに出ており、就任早々のライアン下院議長は、「議会としてシリア難民受け入れ拒絶の法制化」に着手しました。そんな法案を通しても、オバマ大統領が拒否権を行使をすれば意味はありません。ですが、予算問題で「中道派的な工作」をして右派に微妙な距離感を残した新任の議長としては「自分の真正保守度」をアピールする機会と捉えている気配もあり、大統領との「正面衝突コース」へ向かいつつあるようです。
一方で、フランスのオランド大統領は、シリア領内のISIL拠点であるラッカなどへの集中的な空爆を行い、パリ郊外サンドニでの激しい銃撃戦で容疑者グループを制圧した後に、シリア難民の「3万人受け入れ」を決定したと報じられています。
そのオランド政権の判断の中に重たい「当事者性」を見るのであれば、アメリカの共和党が展開している「難民拒否という政治ゲーム」には、やはり「トラブルから距離を置こうという孤立主義」がクッキリと透けて見えるのです。
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