コラム

「特別警報」制度には見直しが必要では?

2015年09月11日(金)17時35分

 もちろん、予算の問題もあるでしょう。また記者の安全を守るようになったというのは大事なことです。ですが、「メディアは救助作業の邪魔」だとか「報道機関が二次災害を起こしたら迷惑」という理由で、テレビの即時性、映像情報によるリアリティの伝達という効果が「全く発揮できない報道」を強いられているとしたら本末転倒だと思います。

 視聴者に明らかに「迫っている危険」を理解させる、そのために必要な映像と情報を届けるのはテレビ報道の責務であると思います。「特別警報」が発令されるとは、どのような切迫した事態なのか、その具体的な事実を伝える責任はテレビにあると思います。

 6点目は、「言葉のインフレ」です。例えば、この「特別警報」に伴って出される「命を守る行動をしてください」という言い方は、既に形骸化しています。切迫感がニュアンスとして伝わらないからです。

 危険の指摘はもっと具体的であるべきです。「堤防が決壊すると最悪の場合、津波と同じような危険な速度で大量の水が殺到します。増水している河川の近くの低い場所からは直ちに避難してください」とか「土砂災害は前触れなく発生します。夜にかけて豪雨の予想される山間の傾斜地では、前夜から必ず避難して下さい」といった、「形骸化していない」切迫感のある警告の言葉を工夫すべきだと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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