コラム

アメリカでも大変な「大雪」問題

2014年02月18日(火)12時10分

 ですが、自分のスタイルで市政を行うにしても、やり方が余りに極端であり、説明も全く無かったことから市民の不満は爆発しています。NBCの「全米で最も有名なお天気キャスター」であるアル・ロッカーなどが、徹底した批判で市長を追い込み、最終的に市長は謝罪に追い込まれています。

 ところが、先週の17日の大雪の際、再びデブラシオ市長はアル・ロッカーとツイッター上で口論になりました。この日は、ニューヨークでも30センチ近い降雪があったのですが、市長は市内の公立学校をオープンしたのです。降雪量からするとやや異常な判断で、しかも一旦子供たちを学校に集めたものの、道路の状況が悪化したために学校を早めにクローズしているのです。

 大雪時に危険を覚悟で子供を学校に連れて行くのも大変で、親も教師も大変な労力をかけなくてはならない、とにかく市長の判断はメチャクチャだというのです。ロッカーは「この市長は一期で終わりかも」などという激しいツイートも行っていました(後に撤回)。では、どうして市長は強引に学校をオープンしたのでしょうか? これも彼なりの政治姿勢らしいのです。

 要するに「貧困層の子供たちは、学校で無料の給食サービスを受けられる」という制度があることから、ニューヨークでは、そうした子供たちには朝食と昼食を無料で提供しているのですが、雪で学校を閉校にしてしまうと、無料の食事の提供ができなくなる、そのために大雪の中で強引に学校をオープンしたというのが真相のようです。

 行き過ぎた格差を是正するのは必要と思いますが、年明けの就任以来、デブラシオ市長は「とにかく前任者たちとは異なる判断」をしよう、それも「富裕層ではなく、貧困層を徹底して優遇しよう」と焦る余りに、かなり思い詰めており、それが「異常な大雪対策」になっている、そんな解説も出ています。

 いずれにしても、大雪への対策は、特に雪国でない地方の場合は大変です。アメリカ東部に関して言えば、こんなに降雪の多い年というのは多くの人が初めて経験する事態となっています。お互いに、用心には用心を重ねていきたいものです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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