コラム

全日空機が泥酔客をアメリカに引き渡したのは正しいという3つの理由

2014年02月13日(木)13時31分

 2つ目としては、容疑者の暴力が切迫していた場合に、状況を早急にコントロールすることが必要になるということがあります。報道によれば暴れ始めたのは離陸後4時間経過した時点であったようで、仮にそうであれば恐らくは新千歳にダイバートするよりも、アンカレジが近かったと思われます。国内で最も近い空港は中標津だったかもしれませんが、中標津は大型機材ではムリでしょう。最近は、日本でも法令が改正されて、機内暴力に対しては機長の判断で手錠を使用したりできるようになっていますが、泥酔客を階下などのスペースに閉じ込めてJFKまで飛ぶなどというのは非現実的であり、着陸したのは正しいと思います。

 3つ目としては、とにかく容疑者の身柄引き渡しと最低限の捜査、そして給油といった作業に時間がかかる以上、乗客に対して遅延を最低限で済ますためにも、経路地のアンカレジに降りるしかなかったということがあると思います。アンカレジに降りるのであれば、その結果として、米国に対して被害を申告して捜査権行使を要請したということになったわけです。

 いずれにしても、日本の航空会社は乗客を必要以上に「甘やかしている」というイメージが、日本の国内外にあります。今回の毅然とした措置によって、そうした妙なイメージが払拭されていくとしたらそれは悪いことではないと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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