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プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
華やかな「2期目就任式」の影にあるオバマの計算
20日の日曜から、21日の月曜までアメリカのニュース各メディアは「就任式祝賀」関係の記事や番組で埋め尽くされました。それにしても、オバマという人はある種の「幸運」を持っているようです。というのは、法的には2期目のスタートは「20日」なのですが、この日が日曜日の場合は宣誓式は室内で簡素に行い、改めて翌日の月曜日に大観衆の前での宣誓セレモニーをするという規定があるのです。
つまり、2日間にわたって「メディア・ジャック」ができるというわけです。更に、月曜日の21日は「キング牧師誕生日」であり、黒人人権運動の歴史を振り返り、そこに自分が「初の黒人大統領」として歴史を付け加えるという効果もあるわけです。
その就任スピーチですが、「オバマにしては短い」というのがもっぱらの評判ですが、ある種大変に堂々としており、確かに今回の「再選」を受けたものとして、「絵になる」ものでした。内容的には、今回の2012年の選挙戦でのスピーチとは違って、2008年の時のように「威風堂々」としたものでした。
こうした「演出」は極めて政治的なものであり、ホワイトハウスの知恵者たちが世論の動向を見ながら「設計」したものだと思われます。仮にそうだとして、決して選挙では「大勝」ではなかったオバマ、そして支持率も50%強しかないオバマが、そこまで胸を張ることができるのでしょうか?
常識的には、そんなに簡単には行くはずはないわけです。にも関わらず、これだけ堂々と「見栄」を切って見せるということがどうして可能になっているのでしょうか? そこには現在のオバマ政権が、政治的な綱引きで「したたかに」主導権を握りつつあるということがあります。
まず、年末年始の「大問題」であった「財政の崖」に関しては、景気を人質に取って共和党を分裂させ、増税案を通すことに成功、更に債務上限の問題も押し気味に進めています。共和党は「最後の砦」である歳出カット問題では抵抗する構えですが、勢いは今ひとつというところです。
共和党との問題では、コネティカットでの惨劇を契機にオバマ政権が進めている銃規制の問題があります。こちらに関しては、NRA(全米ライフル協会)が激しく抵抗する中で、必ずしもオバマの思い通りにはならないという見方もあります。ですが、税制改正に対してそうであったように、銃規制についても、共和党は一枚岩ではなく、様々な揺さぶりをかけてゆくことになりそうです。
オバマは、今回の「2期目の就任演説」で、「我々は2008年の初心を2016年までには達成する」と意気込んでいましたが、それは当選したときの理念型のリーダーシップに戻るということではなく、あらゆる政治的な手段を使ってでも、中道左派の政策を実現して見せるという宣言だと思われます。
例えばですが、財政危機の続く中で、新たな戦争を始める余裕はないと言われています。そんな中で、オバマはどのような危機対応をして行くのでしょうか? この就任式と同時並行で、アルジェリアの人質事件については悲惨な結果が報じられていましたが、アメリカでは「祝賀ムード」に水を差したくないという意図なのか、相当に長い間「犠牲者は1名」という報道が続きました。
一部には「マリでの軍事作戦にアメリカも参加すべき」という声も出ていますが、おそらくはオバマとしては慎重姿勢で行くでしょう。但し、今回の人質事件を契機に、偵察と攻撃目的の「無人機」について、その隠密性を確保するために、潜水艦に配備して洋上発射するようなハイテク化が議論されています。
いずれにしても、オバマという政治家は、表面的には理念追求型のスマートな政治家というイメージがありますが、目的のためには「思い切った」行動や「大っぴらにはできない」隠密行動も実施するという、二面性があるように思います。これからの4年間、アメリカの政治も、国際政治も、一筋縄では行かない複雑な状況が続くと思いますが、そんな中で、オバマがどのように「完走」してゆくか、注目してゆきたいと思います。
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