コラム

ハリケーン「サンディ」直撃のインパクト

2012年10月31日(水)10時45分

 まだ停電が続いており、ケーブルやランドラインも不通、3G回線も不安定ですので速報ということでお許し下さい。

 それにしても、10月末にハリケーンというのは驚きです。上陸まで成長を続けて中心気圧940ヘクトパスカルという猛烈な勢力でニュージャージー州が直撃を受けるとは思いませんでした。

 私の住むニュージャージー州の中部は、目の進行方向右側であったために、雨の被害は大したことはありませんでしたが、風の威力は大変で、私の住むエリアでも倒木があちこちでゴロゴロしており、家屋の損傷被害は相当なようです。

 特に大変だったのは、海沿いでした。運悪く満月で大潮であったこともあり、高潮による洪水被害が深刻です。大西洋岸のリゾート都市であるアトランティックシティでは街の80%が水没する一方で、孤立した地域なども出ています。

 ニューヨークでは、マンハッタン島に出入りするトンネルの多くが水没するなどの被害が出ており、ニューヨーク証券取引所は月曜と火曜は歴史上まれな悪天候による閉鎖という事態に追い込まれています。

 気になるのは大統領選への影響ですが、オバマ大統領は全ての選挙戦をストップして危機管理の動きに徹しています。

 一方のロムニー陣営も、派手な動きをストップしています。ちなみに、私の住むニュージャージー州の知事は、ロムニーの盟友とも言えるクリス・クリスティ氏です。最初はオバマの悪口も言っていたのですが、途中から選挙戦への影響を計算したのか「大統領の迅速な対応に感謝」など言動に留意するようになっています。

 やはり、こうした大災害を経験してしまうと、どうしても「大きな政府論」の民主党的な発想に被災地は傾くのが人情で、オバマはこのチャンスを生かそうとし、共和党サイドはダメージを最小にしようとしているのだと思います。

 今回の被災地では、ニューヨークやニュージャージー、コネチカットは民主党優勢ですが、共和党が勝利への票読みをしているバージニアやウェストバージニア、両者が拮抗しているペンシルバニアも大きな被害が出ており、影響は相当に出るかもしれません。

 とにかく、選挙自体をスムーズに進めるためにも、各州でのインフラ復旧が迅速に進むことを期待したいと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story