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【写真特集】金融エリートたちの意外と普通な苦悩
GRANITE AND GLASS
Photographs by GEORGE NOBECHI
【太一】「別の何かに挑戦できるくらい、ほかの才能があればよかったんだけど」と、自宅がある高層マンションのエレベーターで話した。彼は私の元後輩で、ずば抜けて優秀だった
<時には世間から悪者扱いまでされる金融業界だが、実際にはさまざまな葛藤やストレスを抱えて苦悩する普通の人々>
世界中の優秀で野心的な人々が重厚な建物で働き、とてつもない高給を稼ぐ──。世間から「1%の豊かなエリート」とひとまとめにされ、時に「悪者」扱いされる金融業界の人々だが、現実の人間模様はもっと複雑で、多くは重荷や葛藤やストレスを抱えて懸命に働いている。
何より彼らの輝ける日々は08年の金融危機で終わった。今や、桁外れの報酬を得る層はほんのひと握りだけ。古き良き時代が二度と戻らないと知りながら、彼らはなぜこの業界、そして東京に残るのか。
今回、私は東京の金融業界で働く人々の姿を撮った。実は私も数年前まで、この業界で働いていた人間だ。だが、ずっと感じていた居心地の悪さから抜け出し、夢だった写真家として生きる決心をした。
撮影に協力してくれたのは私のかつての同僚たち。彼らが感じている喜び、恐れ、不安、未来への希望を、可能な限り正確かつ誠実に写し出したつもりだ。その中で、本当は私と同じように別の夢に挑戦したいと考えたり、現状に行き詰まりを感じている人が少なくないことを知った。
それでも、彼らの多くは現在の職を捨てるというリスクは取れずにいる。待遇は以前ほどではなくともそれなりに恵まれ、家族との生活も安定しているからだ。東京という都市も、キャリア形成の場としてアジアのトップではなくなったが、安全で健全な生活を送れる環境という面で、捨て難い魅力を持っている。
現状に満足はしていないが、現状を捨てるほどの不満はない。甘えているつもりはないが、「自分にできることがほかにあるのか」という不安もある。東京の金融業界で見えたのは、そんな当たり前で普通の人間たちの姿だった。
――ジョージ野辺地
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