コラム

討論会惨敗の米民主党がここから「仮病」で大統領選に勝つ方法

2024年07月01日(月)17時23分
米大統領選, ジョー・バイデン, ドナルド・トランプ, 政治, 米社会, 米民主党, 米共和党

討論会でトランプの発言をうつむきつつ聞くバイデン(6月27日、米アトランタ) BRIAN SNYDER-REUTERS

<バイデン大統領にとって散々な結果となった米大統領選討論会。ここから「短期の大病」で逆転するための秘策をハーバード大卒芸人のパックンが考えました>

おっと。短期的な「大病」に罹りそうだ。

ちょっと風邪気味だから早めに寝て治そうとするときってあるよね? そんな感じだけど、風邪ではなく大病の予感がするんだ。でも、ご心配なく! すぐ治るし、そもそも僕自身の体調の話ではない。

大病になりそうなのはバイデン大統領だ。先日の大統領討論会では声もカサカサで咳込んでおり、討論会の最中にスタッフが「実は風邪をひいている」とメディアにリークしている。しかし翌日の集会には出ているし、その風邪の心配もなくなった。というか、どっちみち僕がしたいのは本当の病気ではなく、都合上の「大病」の話だ。

医師のトモダチから聞いたところ、「大病」に罹りたいとき便利なのは「胃痙攣」だそうだ。仕事もできないほどの激痛だが、検査で感知できるものではない。つまり、胃痙攣じゃないことも証明できないので、自己申告だけで診断書を書いてもらえるのだ。バイデンが「胃痙攣」でも訴え、一週間ぐらい公務を休むことにすれば、「大病」としてカウントされることでしょう。

そして、タイミングをうまく見計らって自らの判断で「治れば」いい。胃痙攣はつらいと思うけど、「胃痙攣」は全く痛くない。よっし、これにしよう。

僕がバイデン大統領のブレーンであれば、そんなアドバイスをするだろう。

本当はバイデンは楽勝だった

そう思ったきっかけは先日の米大統領選に向けた候補者同士の討論会。

討論会でバイデンの対戦相手を務めたのはドナルド・トランプ氏。以前、女性に性的暴力を加えた。女性を誹謗中傷した。慈善団体の資金を横領した。不動産の価値を不正に操作した。選挙法違反の一環としてポルノ女優への口止め料の記録を偽造した。そんなトランプ氏。

上記はどれも噂や疑惑ではなく、民事や刑事裁判で立証されたれっきとした事実だ。討論会の司会も「前大統領」と呼ぶトランプだが、肩書を最新バージョンに更新するなら「性加害者・詐欺師・犯罪者」と言った方が正確だろう。

負けるはずがないが、そんな前科持ちにバイデンは負けた。

討論会の最中にトランプは30回以上虚偽の発言をしている。それも中絶、テロ、イラン、ウクライナ、税金、議事堂乱入、関税、貿易、退役軍人、選挙、移民、年金、メディケア(高齢者医療保険制度)、経済などなど、討論で取り上げられたテーマのほとんどについてだ。

バイデンはウソを指摘し、正しい情報で反論できたはず。例えば、トランプはバイデン政権下で財政赤字も中国との貿易赤字も史上最悪レベルに達したと主張したが、そこにチャンスがあった! バイデンが「それはウソ。実はその二つの最悪の記録を作ったのはあなたの政権です」と、真実でもって論破すれば楽勝だったのに、バイデンは(自らも何回か数字を間違えたりして誤報を発信しながら)大ウソつきに負けた。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

クルド系勢力のシリア暫定政権合流、トルコが歓迎 安

ワールド

豪、米の鉄鋼アルミ関税に対抗措置取らず 首相「代償

ワールド

米教育省、職員の半数を一時帰休に トランプ大統領の

ワールド

米国抜きで軍幹部会合、西側諸国 ウクライナ停戦後の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 8
    トランプ=マスク独裁は許さない── 米政界左派の重鎮…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story