1978年、極左武装グループ「赤い旅団」の誘拐、映画『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』
5話のモーロの妻エレオノーラは、夫からの手紙に心を揺さぶられ、政府や法王への説得をつづける。そんな彼女は子供たちと、湖の捜索を伝えるニュースを見る。彼らのもとには、第7の声明について、警察は偽物であることをすぐに内務省に伝えたが、誰もがそれを信じていたという情報が入り、モーロの長男ジョヴァンニは、「厄介払いしたくてたまらないんだ」と語る。
強硬路線と柔軟路線がせめぎ合う図式
強硬路線と柔軟路線がせめぎ合う図式は、偽の第7の声明が多方面に及ぼす影響によって崩れていく。そこには見えない力が働いている。
それを踏まえると、1話と6話に盛り込まれたモーロが生きたまま発見され、病院に収容される場面の意味の違いも明確になる。
モーロが誘拐されてから、ある時点までは、彼が解放される可能性があったが、それが幻想に変わる。1話の可能性と6話の幻想は、同じ場面の繰り返しのように見えて、異なる印象を与える。
1話のそれは、単なる結果ではなく、その後を想像させる生々しい空気が漂っている。病院に駆けつけたアンドレオッティ、ザッカニーニ、コッシーガの間で、まずアメリカの友人に連絡をとか、家族や法王にはまだ知らせずに、といった指示が飛ぶ。それは偽の第七の声明と無関係ではないかもしれない。
『夜よ、こんにちは』と本作は、「夜」をめぐって対をなしていると書いたが、緻密に構成された本作の世界に引き込まれていくうちに、実はそれは内側と外側という境界を越えたところにあったのではないかと思えてくる。
『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』
8月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー
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