冷戦下の時代に翻弄される音楽と男女の軌跡を描く『COLD WAR』
冷戦下という時代に翻弄される二人......『COLD WAR あの歌、2つの心』
<冷戦下のポーランド、ベルリン、ユーゴスラビア、そしてパリを舞台に、陰影に富む美しいモノクロ映像と音楽を通して1949年から64年に至る男女の軌跡を描き出す......>
『イーダ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキ監督の新作『COLD WAR あの歌、2つの心』では、冷戦に翻弄されながらも深く愛し合う男女の数奇な運命が描き出される。
1949年、冷戦下のポーランド。新たに音楽合唱舞踊団を立ち上げるための養成所で、ピアニストのヴィクトルと歌手を夢見る生徒ズーラが出会い、強く惹かれ合っていく。だが、西側の音楽を愛するヴィクトルは政府に監視されるようになり、パリに亡命する。音楽合唱舞踊団で歌手として成長を遂げたズーラは、公演で訪れたパリでヴィクトルと再会し、すれ違いを経てようやく共に暮らすようになるが、ある日突然、ポーランドへ帰ってしまう。ヴィクトルは彼女を追ってポーランドに向かうが──。
音楽を通して1949年から64年に至る男女の軌跡を描く
本作はパヴリコフスキの両親に捧げられ、ふたりの主人公の名前はその両親からとられている。ただし、部分的に両親の人生に基づくだけで、伝記映画ではない。
パヴリコフスキは、大胆な省略が際立つ構成、陰影に富む美しいモノクロ映像、緻密なアレンジが施された民族音楽やジャズなどを駆使することで、物語に頼らず、音楽を通して1949年から64年に至る男女の軌跡を描き出していく。
だから省略部分を想像力でいかに補うかによって印象が変わってくる。なかでも筆者が特に注目したいのが、廃墟となった教会に対するパヴリコフスキの眼差しだ。物語の始まりと終わりに同じ場所が出てくることは珍しくないが、登場人物と場所の関係をいくらか説明すれば、そこに特別な意味が込められていることがわかるだろう。
本作は、3人の男女が、辺境の村々を訪ね歩き、音楽を収集する場面から始まる。その3人とは、主人公のヴィクトル、ダンス教師のイレーナ、そして彼らを指揮する管理部長カチマレクだ。彼らは、国立の音楽合唱舞踊団を立ち上げるために旅している。
そんな旅の途中で、カチマレクが車を降り、雪に覆われた平原の道を歩き、林で用を足す。すぐそばに戦争で破壊され、廃墟となった教会があることに気づいた彼は、そのなかに入っていく。教会は、壁のフレスコ画が剥がれかけ、丸屋根が崩れ落ちて空が見えている。そこから映像は、地方で見出された少年少女が音楽合唱舞踊団の養成所に集められる場面に変わる。
教会はカチマレクがたまたま目にしたもので、おそらくはその場所も把握していないし、すぐに忘れてしまうような出来事に見える。ところが、最後に再び教会の場面になるとき、そこに現れるのはズーラとヴィクトルであり、彼らは以前から知っている場所、まるで戻ることが運命づけられている場所であるかのように、そこにやって来る。
義務づけられた社会主義リアリズムという芸術
そうなると、この教会は象徴的な意味を持つことになる。ではどんな意味か。パヴリコフスキが音楽を中心に据えていることを踏まえるなら、やはり音楽から考えてみるべきだろう。スレファン・シレジンスキ/ルドヴィク・エルハルト編『ポーランド音楽の歴史』には、戦後の音楽の状況について、そのヒントになるような記述がある。
「戦争が、破壊の結果として、また徹底してポーランド文化の抹殺をめざした5年半にわたる占領者の計画的、組織的活動の結果として残したものは荒涼たる文化の砂漠であった。したがって、まずなすべきは活動の再開や刷新ではなく、音楽生活とその組織、施設を完全に一から作り出すことであった」
イタリア映画界で異彩を放つ女性監督の新作『墓泥棒と失われた女神』 2024.07.18
アウシュヴィッツ収容所の隣、塀のこちら側のファミリードラマ『関心領域』 2024.05.23
学校で起きた小さな事件が、社会システムの欠点を暴き出す『ありふれた教室』 2024.05.16
19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』 2024.04.25
アイスランドがデンマークの統治下に置かれていた時代の物語『ゴッドランド/GODLAND』 2024.03.28
-
港区 営業アシスタント「海外ネットワークを持つ外資系総合商社」フレックス/残業月10h/年休120日
コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド
- 東京都
- 年収500万円~550万円
- 正社員
-
一般事務/メーカー 残業なし/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
貿易事務/流通関連 駅チカ/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
経験5年必須/プリセールス/年商250億円企業/リモート可/外資系企業
SAI DIGITAL株式会社
- 東京都
- 年収400万円~750万円
- 正社員