コラム

すべての経済政策が間違っている

2021年10月14日(木)19時45分

また、家賃補填なども逆効果である。行動制限でどんな飲食店も客が減っているのだから、飲食店の土地、建物のオーナーは家賃を自ら減免すべきである。これは、飲食店経営者も悪く、こんなときに普通の家賃をとるようなところからは出て行くしかない。コストはかかるだろうが、仕方がない。本来は、出て行かれるほうも困るから、どこかで折り合うはずだ。

その交渉をサポートするのが行政の役割である。もし、ほかの店を入れたいとオーナー側が思うのであれば、それはその飲食店の経営者の力不足であるから、それは仕方がない。コロナが廃業を早めただけで、原因ではない。その場合には、経済的支援を個人に対してするべきで、生活保護ではないが、廃業者支援金を失業手当に近い仕組みで行うのが正しい。

さて、これと同様なのが、消費税引き下げ、半減の5%やゼロ、という主張も最悪である。GoToと同じように、金がないから消費しなかったのではなく、消費する機会が与えられなかっただけである。だから、消費税を減免することは意味がなく、消費する機会を与えるように、行動制限を解除するしかないし、実際、現在はそうなっているから、消費税減税をする必要はまったくないのである。

コロナと無関係に、消費税はよくない、廃止すべきだ、という議論であれば、私は賛成できないが、論理的にはありうる。コロナに乗じて、自分たちの嫌いな消費税を廃止するという公約を正当化しているのは、コロナ詐欺に近い。正々堂々と、消費税はよくない。廃止だと主張すればよい。

時限的に引き下げるという政策提案は、前述のように間違っている。今は、コロナで待機していた需要が噴出し、1年前はペントアップデマンドと呼んで、待機分が出てくる、ということであったが、今年は、世界的にリベンジ消費という言葉が流行している。これも嫌いな言葉だが、そういう需要があるならば、なおさら、現在消費を刺激することは最悪のタイミングである。実際、インフレが進んでいるのは、供給側の要因が大きいとはいえ、このような噴きだしてきた消費需要もあり、消費刺激は、万が一するのであれば、これらが一巡し、リベンジ消費の反動減が起きたときにするべきである。

これ以上、批判していてもきりがない。

ひとつでもまともな経済政策が出てきたら、私にぜひ報告していただきたい。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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