コラム

日本の政党政治はこれからどうなるべきか(前編)

2017年10月25日(水)17時00分

そうではなく、個々の議員の人格が重要、選挙は人で選ぶ、という有権者の下では、二大政党制は成り立たないし、一国一城の主を望む議員たちによって、安定した二大政党制は成り立たない。

そもそも、二大政党制が安定して成立しているのは、アングロサクソンの国々、それも一部に限られ、ほぼ米国と英国に限られ、英国でさえ、三党である。

欧州の多くの国においては、意見の多様性あるいは価値観の軸の多様性を反映して2つを超える政党が成立し、常に連立政権を組むことになっている国が多く、その連立の組み合わせで、毎回政権の政策は変わってくる。

今回の選挙において、希望の党の代表が国会議員に立候補しなければ内閣総理大臣の指名候補がいない、政権選択選挙なのだから、首相候補が誰かわからなければ、有権者は判断ができない、野党なのか、与党を目指すのかわからないなどあり得ない、安倍首相なら駄目で、ほかの自民党議員なら連立の可能性があるなどおかしい、などという間違った議論が専門家から噴出した。これらはすべて間違っている。

与党か野党かは連立次第

小選挙区制の導入の誰かの(政治家か専門家かしらないが)下心が、二大政党制の実現にあったとしても、法律に二大政党制とは書いていないのであるから、それは社会が選ぶことになるのであり、その場合に、少数政党が生まれるのはありうるし、日本をはじめほとんどの社会ではほぼ必然なのである。

そのような場合に、党の政策を実現するために、妥協しつつ部分的にでも少しでも実現するために、野党として議会を運営するのか、与党に入るのか、それは選挙が終わってから、連立の組み方の駆け引きの中で当然条件闘争として起こるべきものである。大臣ポストとかの駆け引きばかり取り上げるが、本来は政策の駆け引きであり、例えば、公明党が消費税の軽減税率を盛り込ませたのは、連立与党に入ったことによる果実であり、このような形が選挙前、選挙中、選挙後の動きの中で模索されるのは当然なのである。

選挙の結果が出る前に与党か野党かなど、決まるはずがない。政策は決まっていないといけないが、その実現手段を委ねるのが間接民主制であり、議会制なのだから、100%間違っているのは専門家の方なのである。希望の党の問題は、政策がまったく決まっていなかったことにあり、それの方が致命的であるが、専門家の批判は政策の中身に向かうべきであったのである。

第三の政権交代については、日本においては、2009年の選挙で政権交代バブルが起きたために、政権交代こそが必要だと専門家や野党の候補が言うから、人々もそう信じてしまっているが、これも間違いだ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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