コラム

軽減税率の何が問題か

2015年12月16日(水)13時47分

 この結果、経済も停滞、税収も減少し、日本経済は地味な危機に陥る。日本の財政が持ってきた、国債市場が守られてきたのは、現在は日銀の大量購入によるものだが、ベースには、日本の消費税率はまだ低い、これを上げる余地が大きいので、そうすれば、財政問題は深刻にならずに済む、ということがあった。しかし、軽減税率により、税率を上げても、その増収効果は削減され、日本の国債市場も静かな危機を迎えるのである。

 そのとき、まだ政権は自民党政権だろう。公明党との連立はどうなっているかわからない。

 したがって、軽減税率は、次の選挙対策としては有効だが、自民党の長期政権の安定性にとっては大きなリスクをはらむモノであり、政治的にも、理解が難しい政策なのである。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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