コラム

DJ SODA事件の「警備体制に問題あった」は本当か?

2023年08月21日(月)12時19分

DJ SODA OfficialーInstagram

<韓国のDJ「DJ SODA」が今月、大阪の音楽イベントで観客から胸などを触られた事件が炎上している。「露出の多い服装が問題」「警備が不十分」と、その責任をDJ SODAや大会運営者に帰するネットの意見があるが、大間違いだ>

DJ SODAの一件が尾を引いている。ほんの一週間前まで私を含めほとんどの日本人は彼女の名前などまったく知らなかったというのに、今はSNSはおろか、NHKや民放のニュースでも盛んに取り上げられている。もはや大事件の様相である。

【写真】大阪の野外フェスで撮影されたセクハラ被害の決定的瞬間

目下、少なからぬ人々が当日の警備体制の問題だとか、脚立に上がったことの是非、露出の激しい服装、セクシーさを売りにしてきたこれまでのスタンス、さらには竹島絡みの反日思想を持っていたとか、アメリカの空港でFから始まる卑語がプリントされたレギンスの着用に固執したといった話を持ち出しており、何とかして彼女の言動に問題があったことを喧伝すべくディスインフォメーションが繰り広げられている。

ネット上の意見というのは過激化するのが常だから、これがそのまま日本社会の平均的な意見とは思わない。恐らくは現実世界で生きがいの乏しい、社会に不満を抱えながら孤立しているであろう弱者男性たちの心象世界を先鋭化させたものが、ネット上で数多く発現されているに違いない。

だが、それらを差し引いて考えても、ネット上で拡散されている文言の数々は、今の日本社会が性暴力に遭った被害者をどういう目で見て、どう扱おうとしているかを測る貴重なパラメーターになる。

そう考えて改めてSNSの言説を見ると、暗澹とする。DJ SODAに対して何やらマイナスなことを言っている人々の主張は、ほとんど意味を成していないからだ。以下、説明する。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHP新書)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story