インドネシアを走る「都営地下鉄三田線」...市民の足を支える日本の中古車両の行方は?
車内にはドリアンの持ち込み禁止と貼り出されている。熱帯の国らしい。巡回する警備員の姿も目をひく。スリ対策であり、乗客が騒いだり床に座ったりしないように注意する役割がある。
日本製の導入の成果は、車両の不足を補うだけにとどまらなかった。冷房が効いた車両はジャカルタの鉄道の風景を変えるのにも一役買った。屋根に上ったりドアにぶら下がったりしていた乗客が消えた。車内が涼しくなったからでもある。
経済成長とともにジャカルタ首都圏は膨らみ続け、郊外からの通勤も増えている。朝夕はラッシュで混み合う。男性との接触を嫌う女性が不愉快な思いをしないように、2010年には女性専用の車両を投入した。
むさしのドリームジャカルタ行き
日本側でKCIとの連携に力を入れている鉄道会社は、JR東日本だ。社員ひとりを出向させ、車両のメンテナンスや部品の確保など技術支援もしている。
18年春、武蔵野線を走っていた205系が「むさしのドリームジャカルタ行き」という行き先を表示して海を渡った。譲渡価格は明らかにしていないが、無料ではない。
むさしのドリーム「ジャカルタ行き」 惜別・武蔵野線205系電車https://t.co/BqKq6nUzFN
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) March 7, 2018
インドネシアの鉄道会社に譲渡される武蔵野線205 系電車。
「喜んでもらえるよう走らせてみたら」とJR東日本・京葉車両センター現場から発案されたとのことです。 pic.twitter.com/cXDObl7G6t
2代目駐在員の鈴木史比古を18年2月、ジャカルタのKCI本社に訪ねた。40代半ばの赴任だった。インドネシア語を特訓し、同僚との会話に使えるようになっていた。昼食のお気に入りは本社近くのジャワ料理の店。日本円で200円ぐらいの甘辛い地元料理を食べる。
年間の輸送人数が17年、初めて100万人を突破した。鈴木は「日本から学んで、故障が減ったり車両が扱いやすくなったりしたよと頼りにされると、ほんとうにうれしい」と話す。KCIの社員を日本に派遣し、研修もしている。中古車両はメンテナンスが命だからだ。
日本の鉄道愛好家には、気になる話がある。インドネシア政府の高官は中古車両の導入をやめる方針を幾度となく口にしている。自国の車両メーカーINKAを後押しするためだ。
22年には、INKAとスイスのメーカーの合弁会社がインドネシアで生産した新車を導入する方針が伝えられた。地元紙によれば、25~26年から投入される見通しだ。
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