最新記事
シリーズ日本再発見

「アフリカの妖精」に救われて...ヨシダナギだけの写真の世界は、こうして生まれた

2023年03月06日(月)08時06分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

nagi8.JPG

被写体となる人々との信頼関係を築く時間も重要 提供:ヨシダナギ

まあ、もちろん、「アフリカの少数民族」「裸になる」といったキーワードが果たした役割は大きいことも理解している。が、その写真がなければ、テレビからお声はかからなかったとも思う。そもそも、写真がなかったら、私はただの〝アフリカで脱ぐ女〞に過ぎない。

今よりもずっと粗削りで、「もっとブラッシュアップしていかないといけないなぁ」と思い始めたのが、なんとテレビの同行取材が入ったときだった。つまり、現在の作品のような写真はたった1枚しかない状態での『クレイジージャーニー』出演だったのである。

言ってみれば、イチかバチかの賭けで出たようなものである。我ながらギリギリの橋を渡ったものだ。実験的にテレビに出て、よく成功したなと自分でも思う。もし、あのときの旅でいい写真が撮れていなかったら、今の私は存在していなかったし、相変わらずイラストレーターのまま(かニート)だったと思う。完全に私は、あのとき、モデルになってくれたアフリカの妖精〝スリ族〞に救われたと思っている。

こうやって、ネットとテレビ(と、もちろんアフリカ)から「フォトグラファー」という肩書きをもらえたおかげで、私には職業ができた。職業ができて、本当によかったと思う。

私は29歳まで、まともに働いたことがなかった。中学2年で学業というものを放棄してからは、14歳でグラビアアイドルになり、それが嫌になってフリーのイラストレーターになったのだが、案の定、それも嫌になった。どうにかしてそこから抜け出す方法を見つけようとしていたのが、私の20代だ。

「もうすぐ30になるというのに、いつまでもアフリカを追っかけていていいのだろうか? 散々、占いでは〝遅咲きの人生〞だと言われて信じてきたけれども、本当に咲く日は来るのだろうか。一体、私には何ができるのだろう......こんな私にしかできないことがきっとあるはずなんだ」

根拠もなく、ずっとそう思っていた。協調性に欠ける私にはオフィスレディなんて絶対無理だし、当たり前のことを普通の人と同じようにこなせないことも、ちゃんとわかっている。チーム力こそがものを言う仕事は、たぶん私には無理だ。だから人と違う仕事、もしくは、個人プレー的な仕事しかないのだが、それが何なのか、ずっとわからずに見つかるタイミングを待っていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中