「タイパ」に追われる現代人が忘れた、「緩む」ことの大切さ
「例えば、子どもが大人からするとムダにも見える遊びに時間を忘れて没頭するのは、そこに本来の心や身体が求める『喜び』があるからです。頭だけの独裁モードで心身の側を奴隷のようにこき使ってしまうと、いずれ心や身体がストライキを起こしてしまう。また、常に追い立てられるようなメンタリティで生きることは、交感神経が活性し、動物で言えば常に戦闘状態にあるようなものですから、その状態が長期化するといずれ心身に何がしかの弊害が生じることが考えられます」
さらに泉谷氏は、「現代人は量的な情報ばかり追いかける傾向がありますが、思考とは本来、『空白の時間』があってこそ可能なものです。そうした内省する時間がなければ容易にAIに取って変られてしまうような『独自性のない人』が量産される社会になってしまいますし、そもそも人が真の満足や幸せを感じるには、量ではなく質にフォーカスした時間の使い方をすることが重要。例えばビジネスパーソンの方なら仕事の合間にきちんと『緩む時間』を設けるなど、心身が喜ぶ『間』をつくることが大切です」と指摘する。
では、具体的にどのような方法で「緩む時間」を取ることが効果的なのだろうか。
昼寝、ランチ、一服...自分を幸せにしてくれる時間が大事
「ポイントとなるのは、その時間が本当に自分を幸せにしてくれるだろうかということに目を向けること。『やらなければいけない』『やるべきだ』ということだけを追いかけている状態では心の声は聞けません。例えば、許されるなら昼寝をしてもいいし、ランチでは本当に食べたいものを食べたり、たばこを吸う人ならゆっくりと一服をしたり、自分なりの心地よさを見つけてその時間を味わうことが大切なのではないでしょうか」(泉谷氏)
実際、昼寝やおいしいランチに時間を使って「情報の洪水」から距離を置くことは、疲れた頭と心をリフレッシュして、また新たな気持ちで仕事に向き合うことに役立つはずだ。
またたばこを吸う人が一服することも、やはり心を落ち着ける効果が期待できる。そうやって目の前の作業からいったん離れる時間を持った時にこそ、新たなアイデアや解決法が浮かんできたという経験を持つ人も多いのではないだろうか。さらには喫茶店で美味しいコーヒーを飲んだり、レストランでゆったりと食事をしながら仲間と交わす会話や、喫煙スペースなどでの何気ないコミュニケーションが、思わぬ形で仕事に役立ったという人もいるかもしれない。
ただ言うまでもないことだが、そんな「緩む」時間にスマホを片手に大量の情報処理に追われていては意味がない。自分に合った方法でしっかりと「緩む」ための「間」を取り、本当の意味で心と身体が喜ぶ時間を取り戻すこと。そうしたタイパに終われないひと時を持つことこそが、次への一歩を踏み出す活力や新たな発想を生む源泉となるはずだ。まずは休憩の際に、スマホを見ないようにするということから始めてみてはいかがだろうか。