最新記事
シリーズ日本再発見

貧困について書くと悪辣なDMが大量に届く この日本社会で

2022年09月02日(金)16時15分
ヒオカ(ライター)

「なぜ働かない親の家庭のために、税金を使わないといけないんだ。不公平だ」
「貧しければ部活動や習いごと、進学が制限されるのは当たり前だ」

そうした言葉を投げかける人たちは、選ぶことができない生い立ちによって、塾に行けず、習いごとはもちろん、お金がかかる部活さえさせてもらえない、進学を許してもらえない、そんな現実の中で生きなければならないどうしようもない悔しさを経験したことがないのだろう。

私が発信を続けていて感じることは、声が大きい人、社会のシステムを作る側の人には、圧倒的にネイティブ強者が多いということだ。

政治家を見れば、世襲で一度も貧困を経験したことがないという人は少なくない。有名私立一貫校から官僚に、というのもよく聞くケースである。またマスコミ、もっと言えば記者という仕事は、社会のエリート層が多い職種である。出版業界も、特定の有名私立大学の出身者が多かったりする。

もちろん例外だってあるだろう。しかし、全体的に見れば、生まれながらの強者はエスカレーター式に社会の強者になっていく。そして、隔絶された空間を、社会全体だと思って生きていく。

この世は分断され切っている。

そんな強者によって作られた社会は、時に弱者には生きづらい。見えない貧困はないものにされて、社会の初期設定に組み込まれていない。極度の貧困は想定されておらず、必要な支援は届かない。

学歴がないと就活で不利になるが、進学するお金がない。
体が弱いが、病院に行くお金がない。
虐待やDVから逃れたいが、一人暮らしするお金がない。
住所がないから、いろいろな手続きに支障が出る。

私は可視化したい。

そんな社会からこぼれ落ちる人たちの存在を。
普通の人が手にする当たり前が、手に入らない世界から見える景色を。

そんな思いから、今も発信を続けている。


死にそうだけど生きてます
 ヒオカ 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ロ両軍トップ、先月末に電話会談 ウクライナ問題な

ワールド

メキシコ当局、合成麻薬1.1トンを押収 過去最大規

ワールド

台湾総統、民主国家に団結呼びかけ グアム訪問で

ワールド

東欧ジョージア、親欧米派の野党指導者を相次ぎ拘束 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 5
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 8
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 9
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 10
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中