子供を解放し、母親も解放する日本の街──アメリカから見た『はじめてのおつかい』
It Takes a Village
筆者に『はじめてのおつかい』を紹介してくれたレベッカ・クレメンツはシドニー大学の研究員で、日本の駐車に関する論文を執筆している(例えば、日本では車を購入する際に路上ではない駐車場所を確保しているという証明書が必要だ)。
クレメンツによれば、この番組は日本が子供に「都市での市民権」を与えていることを象徴している。
日本の子供は毎日たくさん歩く。特に7~12歳は、5回の移動のうち4回は徒歩だ。
これほど徒歩移動が多い主な理由は、自宅から近い学校に通っているからだ。多くの学校は「歩くスクールバス」方式を採用しており、年上の子供が年下の面倒を見ながら学校まで行進する。
カナダのモントリオール理工科大学准教授で、日本の子供の移動と土地利用について京都大学で博士論文を書いたE・オーウェン・ウェイグッドは、「これは建造環境なのか、それとも文化なのかと考えた」と振り返る。
「その根底には文化的な価値観がある。日本の親は、子供は自分で動き回れるようになるべきだと考える。そして、社会はそれをサポートするような政策を築いている。日本の都市計画は、一つの地区がそれぞれ村として機能するという考えに基づいており、住宅地に店や小さな施設がある。つまり、子供が歩いて行ける場所があるのだ」
ウェイグッドの研究によると、日本の子供は、近隣の多目的なエリアでは子供だけで移動することが多い。目的地が近いというだけではなく、そうした移動の最中に知り合いに会う可能性も高い。
近所の子を気に掛ける
日本の親は知らない人に気を付けるように子供に注意する一方で、挨拶の文化も教えると、ウェイグッドは指摘する。
『はじめてのおつかい』の第7話では、通りを渡ろうとする2歳の女の子(写真)を、近所の顔見知りの商店主が手助けする。14カ国を対象にしたある調査では、近所の大人は他人の子供を気に掛けるという考え方に最も賛成したのは日本の親だった。
こうしたシステムの恩恵を最も受けるのは、母親かもしれない。
子供に付き添いが必要な場面では、日本でもアメリカでも主に母親が面倒を見る。しかし、ウェイグッドの調査によると、10~11歳の子供が平日に親と出掛ける割合は、アメリカの65%に対し日本はわずか15%。子供を解放する街は親も解放する。
これは文化の違いでもあるが、その違いは都市計画のアプローチと深く結び付いている。難しいことではない。その気になれば、どの文化でもまねできるだろう。