最新記事
シリーズ日本再発見

ウィズコロナの教育は「オンラインでやればいい」では解決しない

2020年07月10日(金)16時30分
島田昌和(学校法人文京学園理事長・文京学院大学教授)

日本からもリモートでの海外への発信と相互交流を仕掛けないといけないだろう。せっかく、学生へのリモートでの授業提供の術を身につけたのだからこれを流用しない手はない。

どこの大学も学生の通信負荷とアクセス集中によるサーバーダウンを回避するオンデマンドで音声中心の講義配信スキルを身につけた。これを海外とのやり取りにも適用することで、時差のある欧州や北米とオンラインで授業をつなぐことの制約を回避できるし、新興国の大学などの脆弱なネット環境にも耐えることができる。

これらを使ってこれまでの交流を停めないことだ。学生たちの世界が狭まっていないことを感じさせ、次へのステップを用意してあげたい。

世界中が同じ困難に直面する今だからこそ

通常のメディアには伝えられないような、世界のさまざまな国の同世代の大学生がコロナで不自由な生活を強いられる中で何を考えどんな行動をとっているのか、そしてそれが社会のそれぞれの弱さにどんな影響を与えているのかを知り合えるようにしたいものである。

草の根レベルでコロナに翻弄される世界各国を直に知り、お互いに助け合えることはないのか、はげましになることは何なのかを、大学同士の結びつきにより、在宅で学ぶ学生に伝えて参加させることだ。

世界中が同じ困難に直面する今だからこそ、それぞれの社会であぶり出された差別や偏見、しわ寄せを共有し、今の世界を間近に感じて考え、行動につなげなければならない。ピンチから学べなければ、人類の未来は開かれない。

[筆者]
島田昌和(しまだ・まさかず)
1961年生まれ。1993年明治大学大学院経営学研究科博士課程単位取得満期退学。2005年博士(経営学、明治大学)。現在、学校法人文京学園理事長、文京学院大学経営学部教授。渋沢栄一研究の第一人者。主著『渋沢栄一と人づくり』(共編著)有斐閣、2013年。『渋沢栄一 社会企業家の先駆者』岩波書店、2011年。『進化の経営史――人と組織のフレキシビリティ』(共編著)有斐閣、2008年。最新刊に『きものとデザイン――つくり手・売り手の150年』(編著)ミネルヴァ書房、2020年。

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中