最新記事
シリーズ日本再発見

日本はいま「○○レス」の時代!? 本来あるはずのものがないモノたち

2019年08月20日(火)11時00分
高野智宏

iStock.

<ないほうが便利だから、あるいは、ないほうが健康的だから――。日本では近頃、さまざまな分野に「○○レス」が広がっているように思える>

近頃、「○○レス」という言葉を多く耳にする。レス(less)とは本来、「より少なく」を意味する形容詞だが、例えばコード(線)などの名詞と接続すると「コードレス(無線)」となり、それはコードレス電話機のように、本来あるはずのものがないモノやコトに対して使われることが多い。

意識せずとも、テレビやネットを流し見していれば、「キャッシュレス社会が本格的に到来!」や「いま女子に人気なのは、ジェンダーレス男子!」、または「半数以上がセックスレス夫婦という衝撃!」など、「○○レス」をキーワードとしたニュースや記事が目に飛び込んで来る。

「テレビレス」も出てきた家電「レス化」トレンド

なかでも、最も「レス化」が進んでいるのがAV・家電業界ではないだろうか。例えば、1980年代後半より普及し始めた先のコードレス電話機を筆頭に、コードレスアイロン、コードレス掃除機と、技術革新により「本来あるはずのコード」がなくなった家電製品は枚挙にいとまがない。

AV製品では近年、国内外のメーカーからイヤホンやヘッドホンを「レス化」したワイヤレスモデルが数多く登場している。スピーカーにも、鮮やかなカラーやユニークなフォルムをまとうデザイン性の高いモバイルスピーカーがラインアップ。アウトドアブームの今、大変な人気だ。

これらは「ないほうがユーザーにとって便利だから」というケースだが、AV・家電業界には驚くような「レス化」トレンドも訪れつつある。

「当店で顕著になっているのが『テレビレス』です。本当にごく最近の傾向なのですが、プロジェクターの性能が向上し、価格も下がってきたことから、テレビではなくプロジェクターを選ばれるお客様が増えているのです」と、ライフスタイルに沿った家電製品の提案に定評のある、二子玉川 蔦屋家電の「住」コンシュルジュ、遠藤哲也さんは言う。

遠藤さんによれば、その理由は「ニュースなどはスマホやPCで確認できるし、テレビでも結局観るのはNetfilixやHuluといった動画配信サービスが大半。また、テレビ番組も各局がネットでドラマなど人気番組の見逃し配信をしているため、テレビに時間を縛られる必要がなくなったから」なのだとか。

確かに、筆者の周りにも「オンタイムで観る必要がない」と数年前からテレビレスな生活を続ける人、引っ越しを機にテレビを手放したという知人もいる。

近年のプロジェクターは、10万円前後のエントリー機でも輝度やコントラスト比が高く、リビングなどの明るい空間でも投影された映像は実にきれいだ。プロジェクターの弱点であった音の悪さも、10万円ほどで最新の5.1chスピーカーシステムが手に入る。一般的に発売されているテレビは最大85型で価格は60万円以上。それに比べ合計20万円でホームシアターを構築できるとなれば、もはや「テレビレス」で十分かもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 2人負

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中