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シリーズ日本再発見

日本はいま「○○レス」の時代!? 本来あるはずのものがないモノたち

2019年08月20日(火)11時00分
高野智宏

生活家電においても、別の形で「レス化」の波が押し寄せている。カギとなるのは「家事からの解放」、つまり「家事レス」だ。ロボット掃除機ルンバの最新モデルでは、掃除完了後、ゴミがクリーンベース(ゴミ収集機)内の紙パックに排出され、ゴミ捨てまでもが自動になった。最新の洗濯機では、洗剤や柔軟剤の投入が量も含めて自動化され、乾燥まで勝手に終わらせてくれる。

「どちらも、さらに家事の時間を短縮してくれ、自分の時間を作ってくれると、主に奥様方からとても好評を得ています」と、遠藤さんは言う。

キシリトールから始まった「シュガーレス」の拡大

電化製品同様、食品も「○○レス」の多いジャンルだ。スーパーやコンビニには、シュガーレス食品(カロリーオフ、ゼロカロリーという呼称も一般的)が多数並ぶ。「ないほうが便利」ではなく、「ないほうが健康的」が消費者の心をつかんでいる。

ちなみに、栄養成分表示において「カロリーオフ」とは100gあたり40kcal(飲料の場合は100mlあたり20kcal)以下のことであり、「ゼロカロリー」は100gあたり5kcal(飲料の場合は100mlあたり5kcal)未満を指す。ゼロカロリー商品も厳密には「ゼロ」ではないため、過度な摂取は厳禁だ。

シュガーレス食品人気の発端は、フィンランドで研究開発され、日本では1997年に厚生省(現厚生労働省)が食品添加物として認可した人工甘味料、キシリトールだろう。シュガーレスで低カロリー、しかも虫歯になりづらい特性からガムに使用され大ヒット。ロッテは1997年を「日本におけるキシリトール元年!」としているほどだ。今ではガムで使用される甘味料の代名詞となっている。

食品の「レス化」といえばもう1つ、カフェやレストランで最近よく目にする「カフェインレス」(デカフェとも呼ばれる)も忘れてはならない。

これはカフェインが入っていないこと(一般社団法人全国公正取引協議会連合会によれば、「カフェインレス」飲料に使用できるのは、カフェインを90%以上カットしたコーヒー豆のみ)を意味し、以前は妊婦などカフェインを摂取できない人が中心で、市場規模もごく小さなものだった。

しかし、健康志向の拡大により2010年頃からカフェインレスの市場規模は徐々に拡大。全日本コーヒー協会によれば、2000年には600トン未満だったデカフェコーヒー(生豆ベース)の輸入量は、2010年に約1260トン、2018年には2600トンを超えるに至っている。

最近のカフェインレスブームはコーヒーのみならず、紅茶に緑茶、コーラにまで拡大中。調査会社の富士経済によれば、2018年の「国内デカフェ・カフェインレス(ゼロ)市場」は前年比7.1%増の3260億円が見込まれるなど、食品業界の「○○レス」ブームはこの先も継続しそうな勢いだ。

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