最新記事
シリーズ日本再発見

アメコミが描くドラゴンボールの「その先」

Not Manga But an American Comic

2019年07月12日(金)16時45分
モ・モズチ

アメコミらしい色使いと『ドラゴンボール』の世界観が混ざったハイブリッド作品 Courtesy Dark Horse Comics

<日本の人気漫画の大ファン2人が生んだ、バトルを終えたヒーローたちの自分探しの物語>

世界中で絶大な人気を誇る日本の漫画『ドラゴンボール』。それを見て育った世代が今、クリエーターの側として新たなオリジナル作品を生み出している。

米ダーク・ホース・コミックス社から7月3日に刊行されるコミック『ノー・ワン・レフト・トゥ・ファイト』も、そんな作品の1つだ。本誌は今回、5巻から成るシリーズの冒頭シーンを独占的に公開する権利を獲得した。

原作は『GIジョー』などを手掛けたオーブリー・シターソンで、作画はアルゼンチン人のフィコ・オシオが担当した。2人はアイデアを練る段階から多くの話し合いを重ねてきたから、『ノー・ワン』は限りなく2人の共作に近い。

シターソンとオシオは『ドラゴンボール』の熱狂的なファンで、彼らなりの「悟空とベジータとブルマの旅物語」を作ることで意気投合。「戦う相手はもういない」という意味のタイトルが示唆するように、悪者退治を終えたヒーロー像を描く。

「『ドラゴンボール』のキャラクターがバトルに勝ち、目標を達成し、次の目標探しにもがく姿は描かれたことがない。実に30代にありがちな中年の危機だ」と、オシオは語る。

『ノー・ワン』は、『僕のヒーローアカデミア』や『ワンパンマン』など、『ドラゴンボール』以外の日本の漫画の影響も受けている。「非常に多くの要素がミックスされている」と、オシオは語る。「現代のアメコミのスーパーヒーローが、その前の世代のスーパーヒーローを土台にしているように、多層的な影響が見られるはずだ」

magc190712-amecom02.jpg

『ノー・ワン・レフト・トゥ・ファイト』の冒頭シーン Courtesy Dark Horse Comics

シターソンは『ノー・ワン』を、アニメ『ドラゴンボールZ』のようにディープだが分かりやすい作品にしたいと考えた。『Z』から『ドラゴンボール』の世界にのめり込んだ彼は、壮大な物語であるにもかかわらず、その重さに押しつぶされない面白さに感嘆したという。

「『Z』の登場人物は複雑な世界観に言及するけれど、決して説明的にならない。また『Z』に先立つ153話をちゃんと見ていないファンを置いてきぼりにすることもない。私たちが一番に目指したのは、そういう作品だった」とシターソンは語る。

実際、『ノー・ワン』にはセリフや説明が過剰に詰め込まれておらず、読者がその世界観を自然に理解できるように工夫されている。もちろんそのために、作画担当のオシオが果たした役割は大きい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高

ビジネス

仏クレディ・アグリコル、第1半期は55%増益 投資

ビジネス

ECB利下げ、年内3回の公算大 堅調な成長で=ギリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中