平成の若者「〇〇離れ」と、メーカーの「好消費」開発
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<「嫌消費」世代と呼ばれる若者たちの間で「酒・たばこ・車」は、確かに消費が落ち込んでいる。しかし、明るい兆しがないわけではない>
平成が終わろうとしている。激動の昭和を経て30年。生活や仕事を取り巻く環境が移り変わるなか、若者の嗜好にも変化が起こった。かつて多くの国民が日々の疲れを癒やし、ストレスを発散し、そして趣味として楽しんだ「酒・たばこ・車」離れが今、主に20~30代の若者たちの間で進んでおり、多くのメディアでも取り上げられている。
実際、若者世代において「酒・たばこ・車」の消費は、どれほどの落ち込みを見せているのか。
まずは、酒。国税庁の今年3月の「酒レポート」によれば、成人1人あたりの酒類消費数量は、1992年の101.8リットルをピークに減少を続け、2016年には80.9リットルにまで減少。
とりわけ若者層の減少率が高く、消費者庁による2017年の「消費者白書」では、単身30歳未満男性の1カ月あたりの酒類支出額が、1999年の1737円に対し2014年は1261円。約30%の下げ率となっている。
たばこに至っても、その傾向は顕著だ。厚生労働省が今年9月に発表した2017年「国民健康・栄養調査」によると、男性の喫煙率は1986年の59.7%から、2017年は29.4%へと半減。統計後、初めて喫煙率が3割を切ったことが大きく報道された。
また、なかでも20代男性では、1986年の67.2%から2017年では26.6%にまで減少し、若者のたばこ離れが露わとなった。男性の喫煙率が8割以上にも上っていた1965年と比べると、隔世の感を禁じ得ない。
レジャーやステイタスの象徴であった車も同様だ。この4月に内閣府から発表された「消費動向調査」によれば、世帯主年齢階層別の乗用車普及率は、29歳以下の場合、2005年の67.1%から2018年には56.6%へと低下している。
意外に高い数値と感じるかもしれないが、これは全国を対象とした調査だ。交通機関が発達し車の所有が困難な住宅事情のある首都圏であれば、より低い数値になるだろう。加えて、前出の「消費者白書」でも、単身30歳未満男性の1カ月あたりの自動車等関係費が1999年の1万8814円から2014年には7351円へと大幅に減額している。
自己肯定感を得られず、同調圧力が強い世代の消費行動
これら「若者の〇〇離れ」の要因は、やはり「失われた20年」の引き金となったバブル崩壊後の長きに渡る経済低迷なのか。「そうした経済状況下で多感な10代を過ごした人たちへの、世代交代が大きな要因となっています」と言うのは、ジェイ・エム・アール生活総合研究所を率いる、マーケティングコンサルタントの松田久一氏だ。
松田氏は、そんなバブル後世代を「嫌消費」世代と命名し、著書の『「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち』(東洋経済新報社)で、彼らの消費動向から垣間見えたマインドを詳細に検証してみせた。
「嫌消費世代は10代の頃、バブル崩壊により世の中の価値観がひっくり返った経験をしています。また、ゆとり教育により個性を重んじられましたが、半面、いじめの標的とならないよう、周囲に対する同調圧力も強い。さらに、就職活動では何十社受けても内定が取れない超氷河期でした」と、松田氏は説明する。
そのため自己肯定感を得られず、強い劣等感を持ち、仲間や会社というものに不信感を抱いているのだという。そんな嫌消費世代は現在30代のバブル後世代を指すが、松田氏によれば、20代中盤~後半の世代もその意識や傾向を引き継いでいる。