最新記事
シリーズ日本再発見

10年目の「ふるさと納税」に逆風 返礼品に頼らない「2.0」の時代へ

2018年02月23日(金)16時36分
長嶺超輝(ライター)

2012年には100億円ほどだったものが、2014年に約390億円、2016年に約2800億円と急上昇を見せたのである。自治体単位でも、平戸市(長崎県)が2014年に初めて10億円の大台に乗ったのを皮切りとして、以降は年間に数十億円を集める市町村が続出した。

ふるさと納税のおかげで財政収支がにわかに改善され、新たな取り組みや住民サポートを始めたり、集まった寄付金の使用目的に応じた基金を設置したりした自治体も次々に現れた。一方で、明らかにふるさと納税の影響で税収が下がった自治体も、東京23区を中心に存在する。日本の地方自治において、一種の「財政革命」が起きたと評しても過言ではない。

牛1頭から車1台まで!? 加熱する返礼品競争

結果、豪華な返礼品を用意して注目を集める自治体間の競争が熾烈になった。

九州南東部の都城(みやこのじょう)盆地に位置する一大畜産地帯である三股町(宮崎県)は、300万円以上の寄付に対し、宮崎牛1頭の牛肉を返礼品にして話題をさらったし、隣の都城市は、牛肉と焼酎という2大返礼品を切り札にして、2015年から2年連続で全国最高額のふるさと納税を集めてみせた。

かつて視察でやってきた総務省の役人に、都城の市名を「とじょう」と読み間違えられた屈辱的エピソードをも撥ねのける躍進ぶりである。

約130万円相当のシルク製コートを返礼品として用意した富岡市(群馬県)や、30万円の寄付に対して20万円相当のノートPCを返礼した安曇野市(長野県)なども全国から注目を浴びた。

しかし、これといった派手な特産品を持たない自治体は、ふるさと納税でなかなか成果が出せなかった。苦しまぎれに、民間企業の商品券やポイントなどを返礼品としたために、転売目的のふるさと納税も横行した。法律で義務づけられた検査を通していないコシヒカリを返礼品とした自治体もあった。

また、ふるさと納税は高収入の世帯ほど節税効果が高い点が、不公平だとして世間に伝わった。都内のタワーマンションの郵便受けに、ふるさと納税の宣伝広告を投函する業務を各自治体から請け負う業者も現れ始めた。

500万円以上のふるさと納税者を対象に、市内に工場があるスバルの乗用車で返礼したいと発表した太田市(群馬県)の清水聖義市長は、こんな身も蓋もない率直な発言で物議を醸したことがある。

「ふるさと納税は金持ち優遇、スバル車を謝礼品に加えたのは、総務省へのせめてもの抵抗です」「六本木ヒルズに住んでいるような人から、寄付を受け取りたい」(結局、スバル側との交渉が折り合わず撤回)

ふるさと納税に参加する人々の関心が「自分たちの損得」ばかりとなり、市町村の活動や寄付金の使い途などにはなかなか興味が示されない。届いた返礼品を食べた後は、自治体のことも忘れられてしまう。

まさに「金の切れ目が縁の切れ目」の状態となりつつあった。

【参考記事】美味しすぎてマズイ、ふるさと納税のカラクリ(パックンのちょっとマジメな話)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インド、米相互関税27%の影響精査 アジア競合国よ

ビジネス

米人員削減、3月は60%急増 連邦職員解雇で=チャ

ワールド

訪米のロ特使、「関係改善阻む勢力存在」と指摘

ビジネス

イスラエルがシリア攻撃強化、暫定政権に警告 トルコ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 8
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中