極右がいまさら「ユダヤ人差別反対」を叫ぶ理由──ヘイトを隠した反ヘイト
さらにルペンは、ロシアのプーチン大統領と親交が深いことでも有名だ。プーチン体制のもとでは外国人、異教徒、同性愛者といった少数者に対する差別やヘイトが絶えず、そのなかにはユダヤ人も含まれる。
その一方で、プーチン率いるロシアは欧米の極右から「白人キリスト教国の伝統を守る国」とみなされている。だからこそ、極右政党はウクライナ侵攻をめぐるロシア制裁に消極的で、国民連合もその例に漏れない。
そのルペンがユダヤ人差別に抗議するデモに参加したことには、「自分たちは差別的でない」というイメージ戦略があると指摘される。
フランス・ユダヤ人団体評議会のアルフィ議長はルペンが「政治的な目的のためにデモを利用しようとしている」と批判した。
差別反対ウォッシュだけではない
もっとも、このタイミングで「ユダヤ人差別反対」をアピールする極右はルベンや国民連合だけではない。
イスラエルとハマスの戦闘が激化するなか、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が「反ユダヤ主義の流入」に反対する声明を出した他、やはり極右とみなされるイタリアのメローニ首相もユダヤ系団体の代表とユダヤ人差別について協議している。
極右がユダヤ人差別に反対するのは、イメージ改善の他に大きく二つの理由が見出せる。
第一に、ユダヤ人コミュニティを味方につけて「共通の敵はイスラーム」というイメージ化を進めることだ。
国民連合をはじめとする極右は、イスラーム組織ハマスとの戦闘に関してイスラエルの立場をほぼ全面的に支持している。
欧米の極右にとってムスリムは現在も主な標的だ。例えばフランスでは6月、アラブ系青年が警官に銃殺されたことをきっかけに大規模なデモが広がったが、極右勢力は警察による「違法行為の取り締まり」をむしろ支持した。
また、スウェーデンでは昨年の選挙で極右政党が勝利し、その背景のもとでイスラームの聖典コーランを焼却するデモが「表現の自由の一環」として承認された。
だからこそ、極右政党は反ユダヤ主義とともに広がるイスラーム嫌悪に対してほとんど口を開かない。むしろ、例えばフランスではマクロン政権がパレスチナ支持のデモを禁止したが、国民連合はこれを支持している。
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