周辺の西アフリカ諸国は軍事介入も示唆──邦人も退避、混迷のニジェール情勢の深層
ニジェールからイタリアに退避してきた欧米の人々(8月2日、ローマ・チャンピーノ空港) Remo Casilli-REUTERS
<ニジェールのクーデターへの周辺国の反応は強い危機感の表れ>
・西アフリカのニジェールではクーデターをきっかけに治安が悪化し、外国人が退避する事態となっている。
・これを受けて周辺国は経済制裁を発動し始めているだけでなく、軍事介入すら検討されている。
・ウクライナ戦争をきっかけにアフリカの多くの国では欧米との温度差が鮮明になっているが、「クーデターの感染」を恐れる点では立場を共有している。
西アフリカの小国を巡る争いは、グローバルな地政学にとっても無関係ではない。
周辺国による軍事介入の可能性
7月24日に発生した西アフリカ、ニジェールのクーデターは緊張の度を高めている。クーデターを支持するデモ隊の一部が旧宗主国フランスの大使館に火を放つなど、治安の悪化に日本や欧米各国の国民が相次いで退避しているのだ。
この事態に周辺国も動き始めている。
周辺15カ国(ニジェールを含む)が加盟する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は8月2日、使節団を派遣し、軍事政権に拘束されたバズム大統領の解放などを求めた。
これと並行して制裁も始まり、その一環として隣国ナイジェリアはニジェール向け電力を停止した。
ナイジェリアはGDPの規模でアフリカ最大を誇る産油国で、ECOWASでも大きな発言力をもつ。
さらに、7月30日に開催されたECOWAS緊急首脳会合では、軍事介入についても検討された。この会合では「大陸の安定を保つために必要なあらゆる手段をとる」ことが確認された。
ECOWASの「実績」
西アフリカはアフリカのなかでも貧困国や小国が目立つ地域だ。それが軍事介入などできるのか、と怪訝に思うかもしれない。
しかし、ECOWASは本来、経済協力を目的に設立された地域機構だが、この方面でも実績を積み重ねてきた。
そのルーツは20年以上前の1990年代、この地域で内戦が頻発した時期にさかのぼる。リベリアやシエラレオネの内戦で多くの犠牲者が発生し、難民も急増したことを受け、ECOWASは部隊を派遣してこれらを平定した。
近年では、2017年にガンビアの当時のジャメ大統領が選挙での敗北を受け入れず、大統領の座に留まり続けて政治危機が深刻化したとき、隣国セネガルの部隊が介入して事態の収拾にあたった。
さらに、2020年と2021年のマリ、2022年のブルキナファソなどで、それぞれクーデターが発生した際、ECOWASは経済制裁を発動した。
ECOWAS加盟国は「内戦などで国内が混乱した場合には介入されることもあり得る」というルールに事前に合意している。混乱が絶えないアフリカならではのローカルルールとも言えるが、ニジェールの場合もこれを拠り所にECOWASは強い態度を見せている。
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