「稼ぐテロ」が急増するアフリカ──食糧高騰、コロナ、温暖化...多重危機の悪循環
稼ぐ手段としてのテロリスト
だとすると、何のためにテロ組織に入るのか。
UNDPの同じ調査で、自発的にテロ組織に加入した者のうち、その理由で最も多かったのは「雇用機会」の25%だった。これに「知人・家族の参加」の22%が続いた。
テロ組織なのに「雇用機会」というとピンときにくいかもしれないが、イスラーム過激派はその活動資金を調達するため、天然資源などの違法採掘・取引、麻薬取引、誘拐、人身売買、有力者や企業に対する恐喝といった違法行為に手を染めることが珍しくない。
なかには民間商船などに対する海賊行為に手を出す組織もある。
また、ナイジェリアの「イスラーム国西アフリカ州(ISWAP)」の場合、あたかも政府のように、支配地の住民から「税金」を取り立てている。
要するに、テロリストになることが収入につながるわけだが、これを主な目的にする加入者は増えている。
前回2017年のUNDPの調査では「雇用機会」という回答は13%に過ぎなかった。今年2月の調査結果と比べると、宗教的な理由でイスラーム過激派組織に加入する者の割合が半分以下になったのと入れ違いに、経済的な理由が2倍近く増えているのだ。
失業者とは限らない
「貧困がテロを生む」という言葉は、2001年からの対テロ戦争のなかでよく取り上げられた。この観点からすれば、貧困国の集まるアフリカで、イスラーム過激派が貧困層を吸収する構図は不思議ではない。
ただし注意すべきは、UNDPの今回の調査の回答者のうち49%はイスラーム過激派組織に加入した段階で仕事に就いていて、失業者だったのは40%にとどまったことだ(残り11%は学生)。
つまり、まじめに働いても暮らすのに十分な稼ぎが得られない状態が蔓延したからこそ、「雇用機会」を求めてイスラーム過激派に加入する者が2017年段階と比べても急増したといえる。
先述のように、アフリカはもともと貧困国の集まりだが、この数年はそれ以前と比べても生活環境が悪化してきた。
とりわけ食糧危機は深刻で、食糧農業機関(FAO)は昨年末、アフリカで2億7800万人が食糧不足に直面していると報告されていた。大陸全体でみれば、およそ5人に1人の割合だ。
食糧危機の深淵
日本も例外なく見舞われている昨今の食糧価格高騰は、ウクライナ侵攻以前からすでに始まっていた。
コロナ感染拡大で物流が滞っただけでなく、世界全体での「巣ごもり需要」による買い占めや、北米大陸での干ばつ、さらに食糧輸出国の「売り控え」もあって、小麦や大豆などの価格は段階的に上昇してきたのだ。
その結果、World visionは2020年、アフリカで2億8200万人が栄養不良と報告していた(2019年より4600万人増加)。
ここにウクライナ侵攻が追い討ちをかけた。アフリカのほとんどの国は多かれ少なかれ食糧を輸入している。
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