日中の「援助競争」はアフリカの自助努力を損ないかねない
そもそも国際協力は1940年代末、東西冷戦のなかで一国でも多くの国と関係を強化したかったアメリカが始めた活動だ。それ以来、国際協力は常に外交の延長線上にある。程度の差はあっても、基本的にはどんな国でも変わりない。
アフリカに支援する外交的利益とは
この観点からみたとき、日本政府によるアフリカ政策は、国際的な発言力を大きくしようとする目的と切り離せない。
「貧困国の集まりであるアフリカに協力して、なぜ国際的な発言力が大きくなるのか」と思う人もあるかもしれない。実際、アフリカのほとんどの国は貧困国だが、その一方で国の数は多く、国連加盟国の約4分の1を占める。
だから、その支持を集められるかは、国際的な影響力にも関わる。
例えば、国連総会は1971年の決議で「正統な中国政府」の認定を、それまでの中華民国(台湾)から中華人民共和国に切り替えたが、このときに大きな役割を果たしたのがアフリカの多くの国の支持だった。当時、毛沢東は「アフリカの友人たちのおかげ」と語ったといわれる。
日本の場合、とりわけ2010年代以降、中国への意識が国際協力の一つのドライブになってきた。つまり、日本がアフリカで存在感を大きくできれば、中国の国際的な発言力を削れる、という考え方だ。
この2年間で、中国のアフリカ向けコロナ関連協力が増えたことは、日本政府の警戒感を加速させてきた。
今回も、岸田首相は開会式の基調演説で「自由で開かれたインド・太平洋の重要性」を強調し、名指しこそ避けながらも中国を牽制している。
援助競争のワナ
この背景のもと、日本と中国はアフリカで援助競争を繰り広げてきた。TICADと同じく、アフリカ各国の首脳を招いて開催される中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)で示された協力内容をTICADのそれと比較すれば、2010年代からお互いを意識した資金増額がうかがえる。
しかし、援助競争はアリ地獄と同じだ。
どちらも相手がいる以上、自国の状況や成果の有無に関係なく、おいそれとこのレースを降りられない。
しかも、レースで優位に立とうとすれば、少しでもアフリカ受けを良くしようとして、サービスをよくせざるを得ない。例えば日本は「債務のワナ」が指摘される中国との差別化を図るため、アフリカに対する援助(民間投資ではなく公的な資金)に占めるローンの割合を抑えているが、それは贈与を増やすことに他ならない(貧困国にはローンを控えるという先進国の間の合意もこれに影響している)。
2020年の実績でいうと、日本からの貸付は2億4255万ドルで、この年のアフリカ向けODA合計(純額)の約20%だった。ちなみに、世界全体に対する日本のODAのうち貸付の占める割合は約46%だった。
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