マグロ値上がりの危機?──アフリカ新興海賊の脅威
例えば、アフリカ大陸最大の産油国であるナイジェリアの場合、膨大な投資が流入したことによって、それまでアフリカ最大の経済大国だった南アフリカをGDPで追い越すほどの経済成長を実現したものの、貧困層は今も人口の約7割を占める。
生活の悪化は政府や海外企業への不信感・憎悪を膨らませ、イスラーム過激派などが台頭する素地にもなった。しばしば高校生などの集団誘拐を繰り返すナイジェリアのイスラーム過激派、ボコ・ハラムが目立ち始めたのは2000年代末頃からだが、その台頭は過激思想の流入だけが原因ではない。
海賊が特に目立つナイジェリアでは、貧困を背景に陸上でも「ビジネス」としての誘拐が横行している。富裕層や外国人などがとりわけ標的になりやすいが、この構図はギニア湾の海賊が身代金目当ての誘拐を生業としていることに似ている。
そして、コロナで生活苦に拍車がかかり、その活動がエスカレートしている点でも、イスラーム過激派と海賊は同じといえる。
マグロは値上がりするか
食糧農業機関(FAO)の統計によると、冷凍マグロはこの数年、1キロ当たり10ドル弱の水準で推移してきた。しかし、コロナによって各国でツナ缶などの「巣ごもり需要」が増えた結果、マグロ類の単価は昨年第四四半期の段階で、一昨年の同時期と比べて世界全体で約20%上昇した。
このうえ海賊の横行が1年、2年と長期化すれば、操業・輸送のコストをさらに高め、ギニア湾を含む大西洋から運ばれるマグロは値上がりしかねない。その場合、他の地域でとれるマグロの価格もしわ寄せをくうことになる。
しかし、海賊への根本的な対策としては貧困の緩和が欠かせないものの、コロナ禍によって先進国が開発協力を大きく増やせる見通しは立たない。このギャップが続く限り、ギニア湾は今後ますます世界のリスクになるとみられる。
日本で人気の寿司ネタもまた国際情勢とは無縁でいられないのだ。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
「核兵器を使えばガザ戦争はすぐ終わる」は正しいか? 大戦末期の日本とガザが違う4つの理由 2024.08.15
パリ五輪と米大統領選の影で「ウ中接近」が進む理由 2024.07.30
フランス発ユーロ危機はあるか──右翼と左翼の間で沈没する「エリート大統領」マクロン 2024.07.10