コロナに続くもう一つの危機──アフリカからのバッタ巨大群襲来
つまり、前回より各国の手が回らない状況は、バッタの大群にとって勢力を広げやすくする要因になる。いわば新型コロナがバッタに手を貸しているともいえる。
対応が間に合わなければ、その影響は各方面におよぶ。アフリカから中東にかけてはテロが横行し、紛争の火の手が各地であがっているが、食糧不足による社会の混乱はこれに拍車をかけかねない。
アジアに迫る影
そのうえ、今回はアジアも無縁ではない。
2003〜2005年の場合、最終的にはサウジアラビアなどアラビア半島でもサバクトビバッタの来襲は確認されたが、それまでに1年以上の月日を費やした。発生したのが西アフリカで、中東に達するまで距離と時間がかかったからだ。
しかし、今回は東アフリカが発生源のため、15年前より早くアラビア半島を通過し、すでにアジアにその影をみせ始めている。
アフリカと比べても人口過密なアジアでバッタが農作物を奪えば、食糧危機が発生するリスクはさらに高い。そのため、例えばパキスタンと隣接するインドでは、政府がドローンや殺虫剤などの調達を強化している。また、インドはもともとパキスタンとの間でカシミール地方の領有を巡って緊張が高まっていたが、バッタの来襲を受け、協力に向けた協議を進めている。
気候などの問題から、サバクトビバッタが日本にまで飛来してくる可能性は限りなく低いかもしれない。
しかし、今回の大発生は人道危機であるだけでなく、日本にも直接かかわり得る。アジアは中東やアフリカと比べて日本経済により緊密に結びついており、この地域で生産が滞れば、ただでさえ新型コロナでダメージを受けている日本のサプライチェーンは今よりさらに停滞しかねない。
旧約聖書には、神の怒りに触れた古代エジプトで、病気の蔓延やバッタの大発生といった災禍が相次いだという記述がある(出エジプト記)。これを踏まえて、欧米メディアのなかには「世界の終わり」といったセンセーショナルな見出しを煽るものさえある。
筆者はそこまで信心深くはない。しかし、バッタの来襲で食糧事情が悪化すれば、新型コロナですでに高まっていた国家間の緊張がさらに高まることは想像に難くない。少なくとも、バッタが日本にまで来なければ無関係、といえないことは確かなのである。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
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