コロナに続くもう一つの危機──アフリカからのバッタ巨大群襲来
ケニアの牧場でバッタの大群を追い払おうとしている男性(2月22日) Baz Ratner-REUTERS
・東アフリカで大発生したバッタの大群が、海を越えて中東、さらに中国やインドに迫っている
・国連の食糧農業機関はその大発生の規模を「70年に一度」のものとも表現している
・これによって懸念される食糧不足は人道危機であるばかりか、新型コロナの影響を受ける日本のサプライチェーンをさらに揺さぶりかねない
新型コロナに揺れるアジア諸国にもう一つの危機が迫っている。アフリカから飛来し、各地で農産物を食い荒らしてきたバッタの大群が、中国西部にまで接近しているのだ。
コロナ蔓延に続くバッタ来襲
中国政府は3月1日、地方政府にバッタの来襲に備えるよう通達した。それに先立って、2月末から西隣のパキスタンにも、バッタの大群による農作物などへの蝗害(こうがい)を防ぐための専門家チームを派遣している。
パキスタンは中国の「一帯一路」構想にとって最重要拠点の一つだ。その意味で、この支援は不思議でない。
しかし、いうまでもなく中国政府は新型コロナ対応に追われている。その中国を突き動かすバッタの大群とは、どのようなものか。
一口にいえば、このバッタの大群は東アフリカで大発生し、アジアにまで飛んできたものだ。
このバッタは乾燥地帯に暮らすサバクトビバッタで、基本的に日本にはいない種類のものだ。より詳しくは昆虫学者に譲るが、生息環境の変化などに応じてサバクトビバッタの外見や行動パターンには変化が生まれ、集団で行動するようになると、風に乗って1日に100〜200キロも移動しながら、行く先々で穀物や果物を食い荒らす。
1平方キロメートルに集まるサイズの比較的小さな群でも、1日あたりで人間3万5000人とほぼ同じ量を食べるといわれる。
70年に一度の危機
その大発生は、新型コロナとほぼ時を同じくして始まった。
新型コロナが問題になり始めていた2月2日、東アフリカのソマリア政府はバッタの大量発生で食糧危機が発生しつつあると緊急事態を宣言。これと前後して、バッタの被害は東アフリカ一帯に広がり、国連の食糧農業機関(FAO)はソマリアでは25年、隣国ケニアでは70年に一度の危機として緊急事態を宣言した。
その後、バッタの大群は紅海を越えてアラビア半島に至り、さらにペルシア湾を超えてアジアにまで飛来するようになった。
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