コラム

「世界最悪の独裁者」ムガベの死――アフリカの矛盾を体現したその一生

2019年09月09日(月)14時52分

ムガベの後を受けたムナンガグワ大統領は、ムガベほど攻撃的なレトリックを用いないが、基本的にはムガベ路線を継承している。そのため、「黒人の正義」を振りかざしながらも特定の人間だけが利益を得る構図は、基本的にそのままだ。

また、かつてはムガベなどごく一部にすぎなかった人種の政治利用は、欧米諸国をはじめ世界中に広がりつつあるが、アフリカも例外ではなく、例えば南アフリカでは経済停滞で社会的な不満が大きくなるにつれ、ジンバブエと同様に白人の土地の強制徴収を求める黒人の声も大きくなっている。

ムガベの死は一つの時代の終わりを告げるとしても、アフリカの苦悩は今後も続くといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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