リベラルな価値観は時代遅れか――プーチン発言から考える
ところが、どこの国でも格差が拡大し続け、中間層の没落が鮮明になるにつれ、その余裕は失われた。
これまで強者とみなされてきた中間層に「弱者になりかねない危機感」が蔓延しても、そのほとんどはいわゆる弱者と異なり、特別な保護の対象になっていない。こうした「弱者予備軍」からみて、あくまで弱者にゲタを履かせる支援や改革を求めるリベラルは、自分たちを置いてけぼりにするものと映りやすい。
だとすれば、むしろ「普通の国民の利益」を強調する保守派に弱者予備軍が流れるのも不思議ではない。2016年大統領選挙でトランプ氏を支持した勢力のなかに、ラストベルトと呼ばれる重厚長大型の工業地帯の労働者が含まれていたことは、この文脈からも理解できる。
つまり、リベラルの用語や理論を吸収して理論武装し、無党派層を引きつけてきた保守派と比べて、アップデートに遅れたことが、リベラルな政治勢力を衰退させたとみてよい。その自己反省の上に立った再構築なしに、リベラルの復調はないといえるだろう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
※7月16日号(7月9日発売)は、誰も知らない場所でひと味違う旅を楽しみたい――そんなあなたに贈る「とっておきの世界旅50選」特集。知られざるイタリアの名所から、エコで豪華なホテル、冒険の秘境旅、沈船ダイビング、NY書店めぐり、ゾウを愛でるツアー、おいしい市場マップまで。「外国人の東京パーフェクトガイド」も収録。
「核兵器を使えばガザ戦争はすぐ終わる」は正しいか? 大戦末期の日本とガザが違う4つの理由 2024.08.15
パリ五輪と米大統領選の影で「ウ中接近」が進む理由 2024.07.30
フランス発ユーロ危機はあるか──右翼と左翼の間で沈没する「エリート大統領」マクロン 2024.07.10