「アラブの春」再び? 中東で広がる抗議デモの嵐
これが権力を維持したい「独裁者」の方便であることは疑いない。とはいえ、「独裁者」の支配のタガが緩んだことで、それまで抑え込まれていたイスラーム過激派の活動が活発化したリビアの事例をみれば、ブーテフリカ大統領の主張に一片の真実が含まれていることも確かだ。
一方、スーダンはアルジェリアとは対照的に、アメリカ政府から「テロ支援国家」に指定され、バシール大統領は「人道に対する罪」などで国際刑事裁判所(ICC)から国際指名手配されている。その意味で、ブーテフリカ大統領と異なり、バシール大統領の失脚は欧米諸国にとって好ましいことだろうが、他方で大きな混乱がイスラーム過激派の活動を容易にするという意味では、スーダンとアルジェリアはほぼ共通する。
シリアの二の舞?
もはや多くの人は記憶していないが、40万人以上の死者を出したシリア内戦は、もともと「アラブの春」のなかで広がった抗議デモをシリア政府が鎮圧するなかで発生した。その混乱は、イスラーム過激派「イスラーム国」(IS)の台頭を促し、560万人以上の難民を生んだ。
そのシリア内戦は、クルド人勢力によるバグズ陥落を目前に控え、終結を迎えつつあるが、そのなかでIS戦闘員の飛散は加速している。IS戦闘員の多くは母国への帰国を目指しているが、なかには新たな戦場を求めて移動する者もある。その一部はフィリピンなどにも流入しているが、アルジェリアやスーダンでの混乱はIS戦闘員に「シリアの次」を提供しかねない。
「秩序」を強調して自らの支配を正当化する「独裁者」の論理と、その打倒を名目に過激派がテロを重ねる状況は、どちらも人々の生活を脅かす点では同じだ。シリア内戦が終結しても、中東・北アフリカの混迷の先はみえないのである。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売
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