中国に出荷されるミャンマーの花嫁──娘たちを売る少数民族の悲哀
ジャーナリストのガイ・ホートン氏とオランダ開発協力省が国連に提出した報告書によると、2005年段階で少なくとも40万人が居住地を追われていた。この報告書は、軍によって無差別に殺傷された者が少なくないだけでなく、居住地を追われた少数民族が貧困に苦しむなか、国外に逃れたり、バラバラになったりすることで、民族として死滅しつつあると指摘し、「ゆるやかな大量虐殺」と表現している。
東部の少数民族のなかには麻薬を栽培・販売して軍資金を調達し、武装組織を結成してミャンマー政府と敵対するものもあり、この一帯では現在も散発的に戦闘が続いており、ロヒンギャ危機に注目が集まるのと対照的にほとんど関心が払われないことから、「忘れられた戦争」とも呼ばれる。
この背景のもと、少数民族の生活が困窮する状況は、人身取引ブローカーが暗躍しやすい環境になっているといえる。
スー・チー政権の隘路
ミャンマーでは2011年に選挙が復活し、2015年に政権が交代してアウン・サン・スー・チー氏を事実上の責任者とする政府が発足したことで社会・経済の安定が期待された。しかし、議会の議席の4分の1を軍人が占め、さらに5141万人の人口に対して約40万人の兵士を抱えるなど軍が大きな影響力をもちつづけるなか、スー・チー政権はこれを管理しきれていない。
これはロヒンギャ危機でもみられたことだが、東部の少数民族の危機的な状況についても、ほぼ同じことがいえる。
ミャンマー東部には、天然ガス産出国であるミャンマーから中国へのパイプラインが伸びており、さらにミャンマーの港と中国の雲南省を結ぶルートにあることから「一帯一路」構想にとっても重要な立地条件にある。これに加えて、カチン州は近年「世界最大のヒスイ生産地」として注目され、各国からの投資も相次いでいる。
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