世界の流れに逆行する日本──なぜいま水道民営化か
もともと浜松市は下水道使用料がやや高く、平成25年度の段階で全国21の政令指定都市のなかで上から数えて5番目だった(ちなみに最も高いのは新潟市で、最も安いのは大阪市)。
この料金がコンセッション方式の導入でどのように変化したのか、さらに経営が効率化するというなら実際に財政負担がどの程度減ったのか、時系列とともに他の自治体との比較データで確認することが欠かせない。つまり、単に導入するだけでなく、成果を確認することに(モデルケースではなく)テストケースとしての意義がある(というと浜松市民の方には申し訳ないですが)。
それにもかかわらず、テストケースとしての成果の確認ぬきで浜松市の事例を推すことは、勇み足と言わざるを得ない。
これらの疑問に対する説明ぬきに進めるなら、議論の余地の大きい法案を支持率の高い安倍政権の間に駆け込みで通そうとしているのか、あるいはアメリカとの通商交渉のなかで水道事業を含む公共セクターの開放が話題になっているのか、それとも日本国内の水道民営化で弾みをつけて水メジャーがひしめく開発途上国の水道事業に参入しようというのか、といった憶測を呼んでも、文句を言えないだろう。
水道事業が火の車であることは確かとしても、人間生活に欠かせない水の問題であるだけに、政府には「民間の活力を...」といったお題目あるいはイデオロギーに傾いた主張ではなく、より科学的な説明が求められているのである。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。他に論文多数。
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