欧米諸国が「ロシアの選挙干渉」を嫌う理由──最初に始めたのはこっちだから
あからさまな「内政干渉」にあたる以上、プーチン大統領は公式には「選挙干渉」を否定しています。しかし、仮に「欧米諸国が今までやってきたことではないか」と居直られた場合、欧米諸国に返す言葉はありません。自らの行為を映し鏡のようにみせられたからこそ、欧米諸国は「ロシアの選挙干渉」に神経質にならざるを得ないといえるでしょう。
「自由と民主主義」の二側面
これに加えて、「ロシアの選挙干渉」が関心を集めるにつれ、開発途上国では「欧米諸国による選挙干渉」への関心も高まっています。
2017年8月、大統領選挙を控えていたケニアから、野党「国民スーパー連合」(NASA)と契約していた米国人とカナダ人の選挙アドバイザーが退去しました。欧米諸国は同国のウフル・ケニヤッタ大統領の人権侵害などに批判的である一方、ケニヤッタ氏も「ケニアへの干渉」を拒絶する声明を再三発表していました。NASAの選挙アドバイザーの退去は、ケニア政府の圧力によるものとみられます。
ケニア政府の論理は「干渉の拒絶と人権侵害」がリンクしており、その意味で正当ともいえません。
とはいえ、確かなことは、「ロシアの選挙干渉」疑惑で欧米諸国が神経質になればなるほど、これまで「欧米諸国の選挙干渉」に批判的だった勢力が声をあげやすくなっているということです。それは欧米諸国の求心力の低下を促すことで、結果的にロシアの国際的な影響力を高めることにもつながります。
冷戦終結後の世界で、「自由と民主主義」は欧米諸国の発信力を高める要素だったといえます。しかし、その強みは今やアキレス腱にもなりつつあります。これは冷戦終結後の世界の常識が変動しつつあることの、一つの兆候ともいえるでしょう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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