アサド政権によるクルド人支援──「シリアでの完全勝利」に近づくロシア、手も足も出ないアメリカ
これに対して、トルコとクルド人勢力に「二股」をかけ続け、結局どっちつかずに終始した米国は、中東最大の激戦地となったシリアでの内戦の終結に、ほとんど寄与できないことになります。
大統領選挙期間中からトランプ氏は慎重なオバマ政権を「弱腰」と批判し、「米国を再び偉大にする」と豪語してきました。しかし、アフリンのクルド人勢力を支援するという「より強気な」トランプ政権の方針は、結果的に裏目に出たといえるでしょう。とはいえ、国内の「ロシア疑惑」などもあり、トランプ大統領には必要以上にロシアに対する厳しい姿勢を示したい動機づけがあります。
そこで注目すべきは、米国が「ロシアがシリア内戦でのトロフィーを獲得したことを認めて静かに退場する」か、あるいは「ロシアの『完全勝利』を認めずに『IS対策』を理由にシリアへの関与を続けるか」です。前者の場合でも東グータなどで民間人の死傷者は出続けるでしょうが、後者の場合はさらにシリアでの戦闘が長期化することが懸念されます。
アサド政権とクルド人勢力の連携により、2011年から続くシリア内戦は今後の趨勢を左右する重要な局面を迎えたといえるでしょう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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