シルベスター・スタローンの不器用さが『ロッキー』を完璧にした
だからこそ、とろくて不器用でみんなからバカにされて安アパートでカメを飼いながら、ペットショップに勤める内気なエイドリアンに恋するロッキーに、演技ではないと思わせる説得力が付与された。
ウィンクラーは当初、イタリア系であるという前提を変えてロバート・レッドフォードやバート・レイノルズの起用を考えていたようだが、この2人では絶対にロッキー・バルボアにはなれない。
試合で敗者になったロッキーは、エイドリアンの愛を獲得する。いま観返しても完璧な映画だ。
ただしその後に作られたシリーズ作品については、ロッキー以降のスタローンのヒット作である『ランボー』にも共通するが、ほとんど評価できない。いろいろ事情はあるのだろうけれど、スタローンのこの不器用さと先を見る力の弱さも、ロッキー・バルボアそのままだ。
『ロッキー』(1976年)
監督/ジョン・G・アビルドセン
出演/シルベスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング
<本誌2024年2月6日号掲載>
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