誰もが泣く...通好みでない映画『とんび』を瀬々敬久監督はあえて作った
もちろん、この2つはくっきりと分けられるものではない。『護られなかった者たちへ』は話題作の系譜だが、弱者切り捨てを進める日本社会と政治に、強い怒りをぶつける問題作でもある。
もう一度書くが『とんび』は凡庸だ。でもというか、だからこそというか、僕は3回ほど嗚咽(おえつ)しそうになった。誰もが泣く。徹底してハートウオーミング。そういう映画にしようと瀬々と脚本の港岳彦は共犯した。
決して映画通に評価される作品ではない。そんなことは承知で作られた映画なのだ。
『とんび』(2022年)
監督/瀬々敬久
出演/阿部寛、北村匠海、薬師丸ひろ子、杏
<本誌2023年8月1日号掲載>
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