『砂の器』のラストで涙の堰が一気に切れ、映画にしかできないことを思い知る
2022年12月12日(月)19時55分
でも『砂の器』のラスト、ハンセン病に罹患している本浦千代吉(加藤嘉)が幼い息子の手を引いて雪の中を歩く場面で、一気に涙の堰(せき)が切れた。こらえ切れずに嗚咽(おえつ)した。
ただしあの時代にハンセン病について、自分がどの程度を知っていたかはあやしい。映画を観た頃は、まだ過酷な強制隔離政策が行われていた。特効薬が開発され、感染力も強くないと証明されて諸外国では廃止した隔離政策を、この国はつい最近まで続けていた。「らい予防法」が廃止されたのは1996年だ。
社会や政治の矛盾や不正の告発を、映画はとてもエモーショナルに表現することができる。エンターテインメント性が共存できるのだ。そんな表現形態はなかなかほかにない。
上映が終わって慌てて席を立ちながら、そんなことを思ったような気がする。
『砂の器』(1974年)
©1974 松竹株式会社/橋本プロダクション
監督/野村芳太郎
出演/丹波哲郎、森田健作、加藤剛、加藤嘉
<本誌2022年12月6日号掲載>
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