コラム

SMエンタテインメント発のガールズグループHearts2Heartsに見る同社の「伝統と革新」

2025年03月06日(木)20時10分

とはいえ、Hearts2Heartsは2曲出したばかりのニューフェイス。イメージは時が経つとともに変わっていくはずである。特にSMは活動をスタートしてからしばらくは微調整期間を置くケースがあり、例えばRed Velvet特有のハイクオリティでクールなダンスミュージックも初期は未完成で、先輩の楽曲をカバーしたり、新メンバーを投入したりしながら修正していた。Hearts2Heartsも今はそういう時期にあたるのかもしれない。


「짐살라빔 (Zimzalabim)」は2016年からタイトル曲候補に上がりながら保留されていたが、イ・スマンの勧めで3年ぶりに披露されることになった楽曲だという。 SMTOWN / YouTube


伝統を継承しながら革新を追求する挑戦

以上のように見てみると、脱イ・スマン体制を目指しながらも、サウンドとビジュアル面は古き良きSMカラーを尊重していることに気付く。事情はいろいろあっても、イ・スマン時代の良さも十分に分かっているからなのだろう。シンプルに言うと「伝統と革新」だ。このように変えてはいけないものと変えるべきものを整理できたのは、SMの事業を統括する立場のタク・ヨンジュンが必要不可欠だったように思う。

彼は2001年にSMに入社してから、神話、BoA、東方神起、少女時代、SHINee、NCT、aespaなど数々のスターの制作とマネジメントを担当。近年手掛けたRIIZEやNCT WISHなどを見ても、「伝統と革新」の両面を大切にしながらブレイクへと導いている。


NCT WISHは2016年から活動を開始したボーイズグループNCTから派生したサブグループ最後のチーム。日本を拠点に活動するため、シオン、ジェヒの韓国人2人、リク、ユウシ、リョウ、サクヤの日本人4人という構成になっている。 / YouTube

Hearts2Heartsの話に戻すと、このグループでSMらしさが足りないと感じるのは、歌のうまさで突出したメンバーが見つからないことぐらいである。だがそれもSMの伝統である"新人の微調整期間"の中で直していくのかもしれない。彼女たちのイメージチェンジやサウンドスタイルの変化は、2025年のK-POPの重要なトピックになると予想しているが、果たしてその通りになるだろうか?

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、円・スイスフラン上昇 貿易

ビジネス

米国株式市場=反落、ナスダック調整確認 貿易政策巡

ビジネス

今月利下げの必要なし、高関税は対処が困難=ウォラー

ビジネス

トランプ氏、鉄鋼・アルミ関税に変更なしと表明
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story