不動産バブル崩壊で中国経済は「日本化」するか
そのカギとなるのはやはり不動産である。中国の不動産業が今、深い罠(わな)にはまってしまって、なかなか出口が見出しがたい状況にあるのは事実である。しかし、不動産の発展がここで終わっていいはずがない。そのことは戦後日本の経験からいえることである。以下では戦後日本の不動産業の展開を振り返る。
日本の不動産業の成長を支えた「都市化」と「住宅高度化」
戦後の日本の不動産業は、量的に大きく拡大した1940年代末から1973年までの時期、量的には伸び悩んだが地価の上昇が続いた1974年から1991年までの時期、そして地価が下落する1992年以降と、大きく3段階に分けられる(橘川・粕谷編、2007)。不動産バブルが崩壊している2023年の中国は日本の1993年頃にあたると思われるかもしれない。だが、はたしてそうであろうか。
戦後日本の不動産業の成長を支えた社会経済的要因とは、農村から都市への人口移動、そして都市の中での、より広く、条件のよい住宅への住み替えであった。ここでは前者を「都市化」、後者を「住宅高度化」と呼ぶことにする。
戦後の日本の都市化がどのように進んだかを図2に示した。1946年から1970年までは「非農家人口」によって都市人口の定義としている。農家とは、10アール以上の農業を営んでいるか、または農産物の販売金額が15万円以上ある世帯のことを指す。家族の中で老夫婦だけが農業を営み、同居している息子・娘や孫たちはサラリーマンとして勤めていても、もし農業収入が年間15万円を上回るようであれば、その家族全員が農家人口に含まれる。農家が住んでいるところは農村であろうから、農家以外の人口がすなわち都市人口だろう、という推測に基づき、図2では非農家人口がすなわち都市人口だとしている。都市人口(非農家人口)の割合は1946年に55パーセントだったのが1970年には74パーセントへ急速に上昇した。
ただし、1970年代以降は農村に居住しながらも、家族の中で誰も農業に従事しないケースが増えていったので、「非農家人口」によって都市人口を測ることが適切ではなくなった。代わりに農林水産政策研究所の松久勉氏が作成した表から「都市的地域」の人口を抜き出し、それをもって都市人口比率とみなすことにした。図2では1970年以降は都市的地域の人口をもって都市人口比率とみなしている。
松久氏は1950年時点の市町村を基に、各年における各地域の状況に応じて都市的地域、平地農業地域、中間農業地域、山間農業地域に分類し、それぞれの人口を示した(松久、2015)。1970年には都市的地域の人口と非農家人口の比率(それぞれ72パーセント、74パーセント)があまり違わなかったが、その後両者のギャップが開いていった。それは、農村に住む非農家人口が増えたことを反映している。
図2から日本の人口の都市化は1970年代前半までかなり急ピッチに進み、1975年には都市的地域の人口比率が75パーセントに達したが、その後は増加ペースがかなり緩やかとなり、2020年時点でもようやく82パーセントになったことがわかる。日本の不動産業が1974年以降量的に伸び悩んだのはまさに都市化のペースが鈍ったからだといえよう。
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