EVに次いで車載電池も敗戦?──ここぞという場面でブレーキを踏んでしまう日本企業
ところが、2021年に中国ではEV販売台数が333万台、ヨーロッパでは260万台と、年間10万台以上販売するメーカーが何社も並び立ちうるような規模に市場が成長してきた。テスラは2020年に黒字転換を成し遂げたし、中国の新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)さえも2024年には黒字転換を見込んでいる(『21世紀経済報道』、2022年5月2日)。これまで赤字に耐えて続けてきたEV産業がいよいよ利益を生む段階にさしかかってきたのだ。いまこそEV事業にアクセルを踏み込み、生産規模を大幅に拡大すべき時である。しかし、日本の自動車メーカーの動きはきわめて鈍い。
この光景には見覚えがある。いまから15年前に太陽電池産業でまったく同じことが起きたのである(以下、丸川2013を参照)。
太陽光発電はいまでは風力発電と並ぶ再生可能エネルギーの柱となったが、その可能性を初めて世界に示したのは日本である。太陽電池はもともと人工衛星や僻地の灯台など、他からの送電が難しいような場所で電気を作るための手段でしかなかった。製造コストが高くて、とても他の発電手段に対抗できるようなものではなかったからだ。
かつて太陽電池で世界一を独走したシャープ
1994年にシャープが世界に先駆けて画期的な住宅用太陽光発電システムを発売した。一軒家の屋根の上に太陽電池を設置し、その家で使う電気を賄うとともに、余った電気を電力会社に売るものである。太陽電池の技術進歩により、屋根の上の太陽電池で家庭に必要な電気をおおむね賄うことができるばかりでなく、売電収入も得られる。私自身の体験によると、政府からの補助金(50万円)をいただき、かつ2009年から19年まではかなり高い価格で電力を買い取ってもらったこともあり、稼働17年で投資を回収できた。その後も発電は続いているので若干の利益が出ているようである。
こうして住宅用太陽光発電システムの市場が日本に生まれたことにより、シャープは太陽電池の生産量で世界のトップを独走し、京セラ、三洋電機、三菱電機なども後に続き、2005年までは世界のトップ5社のうち4社を日本企業が占めていた。
ただ、日本では2000年代に太陽光発電システムに対する補助金が次第に縮小されたため、2006年以降、市場規模が縮小した。一方、ヨーロッパではドイツが2000年に再生可能エネルギー法を制定し、電力会社に太陽光や風力で作られた電気を高い価格で買い取ることを義務付けたため、2004年頃から太陽光発電所への投資ブームが起きた。住宅用が中心だった日本とは違って、企業が事業として大規模な太陽光発電所を設置した。この波に乗ってドイツのQセルズや中国のサンテックなど、太陽電池生産を専門とする新興企業が次々と立ち上がってきた。
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