EVから自動運転へ飛躍する中国の自動車産業
中国のEV産業での注目すべき動きは、IT産業との結びつきが強まっていることである。いま世界で進んでいる自動車産業の大変革の方向は"CASE"、すなわちConnected(ネットワークへの接続)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェア)、Electric(電動化)だと言われているが、中国ではこのうちのCとAを合わせて「知能ネット自動車(智能網聯汽車)」と呼んでいる。
2018年12月に工業信息化部が「知能ネット自動車産業発展行動計画」を打ち出すなど、政府もかなり前のめりで取り組んでいるが、自動車産業のみならず、IT産業やインターネット産業などさまざまな産業が"CASE"にかかわってきている。
例えば通信機器大手のファーウェイは2019年に自動車関連事業の担当部署を立ち上げ、ネット接続、自動運転、シート、モーター、クラウドの面から自動車産業を支える事業を始めている。自ら自動車を作るのではなく、パソコンとインテルの関係のように、いわば「ファーウェイ・インサイド」の自動車を作る仕事をしている。
通信機器メーカーが自動車にかかわってくるのは、これからの自動車はさまざまな通信をしながら走ることになるからである。将来の自動車は、信号機や横断歩道といったインフラ、道を行く人々、渋滞情報などを載せたネットワーク、そして他の車と通信をしながら走る。これを総称してV2X(vehicle to everything)というが、これはまさに通信機器メーカーの本領が発揮できる分野である。
「ファーウェイ・インサイド」の実力
V2Xに関して世界では二つの技術標準がある。一つは国際学会のIEEEで決められた「802.11p」というもので、これはWiFi技術の延長として作られた短距離通信規格である。ICメーカーのNXPとネットワーク機器メーカーのシスコシステムズを中心にまとめられた。
もう一つは中国が推進しているC-V2Xというもので、これはLTEや5Gといったスマホで用いられている移動通信のネットワークを自動車にも活用するものである。ファーウェイと大唐電信が中心になって開発と標準化を進めている。LTEはすでに各国で基地局が整備されているし、5Gもいま中国などで急速に整備が進んでいるので、この方式はそうした既存のインフラ設備を活用できるメリットがある。
「ファーウェイ・インサイド」方式で開発された最初のEVが、北京汽車グループの北京藍谷極狐汽車の「極狐(Arcfox)アルファT」である。ファーウェイは、EVが外界を感知するために用いるレーザーレーダー、自動運転を可能にする車載コンピューティングプラットフォームやモーターなどのサプライヤーとしてEV生産を支えた。
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