コラム

台湾産パイナップル、来年も買いますか?

2021年08月24日(火)07時27分

となると、今回の台湾産パイナップル輸入停止は結局当初中国の税関が発表した内容以上のものではなかった可能性が大である。もしそうだとすると、日本は、害虫がついていたパイナップルを台湾側の宣伝に体よく踊らされて大量に買ったお人好しだった、ということになる。もちろん日本の厳しい検疫をパスするために、台湾の輸出業者は日本に輸出するにあたってはしっかりと殺虫剤で燻蒸しただろうから、日本に害虫つきで入ってくるということはないはずであるが。

ただ、たとえ台湾産パイナップルを買ったきっかけが台湾側の歪んだ宣伝だったのだとしても、それを買った日本人が台湾産パイナップルにその値段に釣り合うだけの価値を見出したのであれば、結果オーライということになる。筆者自身は台湾産パイナップルの半値で買えるフィリピン産パイナップルが十分すぎるほどおいしいと思うので台湾産を試すことはなかったが、もしフィリピン産の2倍おいしいというのであれば次の機会に買ってみたい。

蔡英文総統はちょっと変わった宣伝をしたが、日本の小売業界の支持を得たことで、台湾は日本のパイナップル市場の開拓に成功したのかもしれない。その真価が問われるのは来年のパイナップルの季節である。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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