日本経済の地盤沈下を象徴する航空業界
いろんな反論が聞こえてきそうである。
「日本は新幹線が発達しているからそちらに客が流れているだけではないか」──たしかにアメリカの航空旅客数が多いのは高速鉄道がないことと関係していよう。しかし、高速鉄道がとても便利なドイツや、高速鉄道の総延長があっという間に日本の10倍になった中国でも航空旅客数が急速に伸びているのに、日本ではあまり伸びていないのだから、新幹線に客が流れたせいばかりとも言えないのである。
「日本の空港施設に限界があるから乗客数を伸ばせないのではないか」──そんなことはないと思う。2000年から今日までの間に羽田に4本目、関西と成田には2本目の滑走路ができ、中部、神戸、静岡の空港が開業し、北九州空港は沖合に展開した。むしろ、空港施設が充実した割には効果があまり出ていない。
ただ、もう一度図1を眺めると、不思議な気がしてきた。日本を訪れる外国人客は2000年には476万人だったのが、2012年は836万人まで増えたのち増加のペースを速め、2018年には3119万人にもなっている。この劇的な訪日客の伸びが図1には表れていないように見えるのはなぜなのだろうか。
そこで図1の日本に関する統計の出どころである国土交通省のウェブサイトを確認すると、実は航空旅客数には日本の航空会社の数字しか含まれていないことがわかった。訪日外国人は外国の航空会社を利用することが多い。だから訪日客が増えている割には日本の航空旅客数があまり伸びていないように見えたのだ。
では日本での外国航空会社の旅客数はどうなっているのだろう。それについては日本国内の空港から国際線の飛行機に搭乗した人の数を国土交通省が発表しているのでそれを使って計算できる。つまり、図2の緑色の線が空港で国際線に乗った人の数、青の線が日本の航空会社の国際線乗客数なので、両者の差が外国航空会社の便に乗って日本を出発した人の数である。
日本の航空会社の便に乗って日本を出発した人は2009年の1534万人から2017年に2214万人へ44%の伸びだったが、外国の航空会社の方は同じ期間に714万人から2218万人へ3倍以上伸びだった。日本の航空旅客数の長期停滞というのはすなわち日本の航空会社、要するにJALとANAの長期停滞だったのである。
「日本の航空会社の長期停滞をもたらしたのは日本経済の長く続くデフレのせいだ」──JALとANAはそう主張するだろう。だが、訪日客の急増というチャンスを外国航空会社の方がはるかにうまくつかんでいるのを見ると、日本の航空会社自身にも停滞の原因がありそうだ。
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